第十六話 垂らす糸は救いになるか
ちょっと忙しいので予約投稿。
「突発的な怪異の襲来。目的は出雲と推測」
「大人しく資料探してたと思ったらお前さぁ……」
気が付いたらアランいなくてどんだけみうが混乱したと思ってるんだ。皇は気が付いたら迷子だったし。いくら大人しめの二人だからって正反対の方向に同時に走られたら困るのは俺なんだぞ。
みうとスミレをあやしてたらアランから連絡があって今に至る。意識がなかった皇と何故かいた出雲は揃って医務室、まだ仕事が済んでないからと俺だけ取っ捕まえて話を切り出したアラン。みうは膝上で疲れて寝てるし、スミレはイデア連れて皇のところ。
「ええと?一応聞くけどお前、”出雲沙織”の経歴を調べてたんだよね?」
「ああ」
「なんで怪異と戦ってんの?っていうか出雲はほぼ監禁状態って言ってなかった?」
「言ったね」
「……おい一から説明しろ」
何らかのきっかけ、気付きを経て走り出したんだろうと思っての要求は、藍沢先生にも提出したという数枚の書類を元に説明される。無断で変更された新人の名簿、出雲沙織と入れ替わるように名を消された東雲泰誠。秘匿された引き抜き、今回の怪異が出雲を狙っていたという事実。
淡々と説明するアランだが、何も言わずに飛び出すくらいには看過できない所業だろう。それでも現場に直接突っ込まなかっただけ冷静だと見るべきか。
「元とはいえ、中戦闘区域に配属予定だった職員としては少し反応が過剰だった。怪異による精神干渉か職員による洗脳なのかは見当つかなかったけど」
「何やってんだ魔術部門」
「取り敢えず緊急保護の手続きはしたし、一旦の安全は確保────」
俺が視線を逸らしたことでアランの言葉が止まる。無言で何事かと問い掛けてくるアランのことは一旦置いて情報を精査。
「……手続き、したんだよね」
「あぁ」
「何か……うん。連れてかれてるし、遣霊発生しそう」
「みうを頼む」
いやに積極的に行動してるアラン。普段よりも焦っているというか、気が急いている、というべきか。
「出雲が連れていかれた」
「治療途中だったはずでは?」
「出雲の外出許可がそもそも下りてなかったらしいな」
担当区域から別の区域に行くということは普通に危険を伴う。故に外出許可という制度があるが……基本的には居場所把握のための手続き、許可が下りないだなんてこと、滅多にない。
「どうするつもりだ?」
「保護します。何がなんでも」
即答したアランに藍沢先生は溜め息を一つ。兄弟揃って強情なのは周知の事実。藍沢先生も止める気はなくひらりと出雲の治療報告書を手に握らせる。
「まだお前のマントを着けてるはずだ」
「?……ああ、証拠ですか」
「外に出ていなかったなんて、とんだ屁理屈だからな」
藍沢先生の笑みにアランも頷きで同意を示す。明らかな無茶がある論理でも穴を突くのは絶妙に難しい。
二人が会話している最中に奥の扉が開く。上着を適当に羽織りながら現れたのは皇。二人は驚く様子なく迎え入れ、後ろの方から聞こえるドタバタに反応はしない。
「アランさん」
「ちょっと皇!?治療がまだ──」
「俺は貴方の剣です」
「はい。行きましょう」
「アランさん!?」
目覚めてすぐに来たのだろう、スミレは感情の読めない顔で俺の方に近寄ってくる。疲れて寝ているみうをイデアで包んでる辺り、少なくとも皇の行動に否を唱える気はないんだろうとは思うけど。それはそれとして勝手によじ登るのはやめろ、危ないから。
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