第十五話 意図を汲み、救いとならん
ちょっと忙しいので予約投稿。
駆け出したアランさんからワンテンポ遅れて俺と藍沢先生は走り出す。正確には、藍沢先生が俺となつ抱えて猛追する。
「すなぁああああ!」
「舌噛むぞ!」
「何事ですか!?」
「知らん!」
嘘だろ。いや知ってたら知ってたで同じこと言うけど。最初は叫んでたなつだけどすぐに楽しくなったのか、両手両足をピンと伸ばして空飛ぶヒーローのポーズ。俺は出来るだけ地面に手足着かないように丸めてるだけ。藍沢先生は身長高いから脱力してても多分大丈夫だけど。
アランさんを追いかけること数分、急に消えたかと錯覚するような一瞬を経て、本当に消える。いつの間にか手にしていた大振りの剣で一閃、空間が斜めにずれて見えたのは怪異と皇と出雲。アランさんが持っていた剣はじり、と黒い煤吐いてぼろぼろと崩れ落ちていく。
攻撃の余波か、対面にいた怪異にうっすらと傷が走っている。じゅくじゅくと膿むような脈動を数回繰り返して元通りになってしまったものの、害を為すものだとアランさんは認識されたらしい。
「志葉さん、状況は」
「上半身は幽霊型、下半身は非幽霊型の怪異です」
「なるほど混合型」
さっくりと状況を把握してから残っていた剣の柄を煤の中へ投げ入れる。皇はナイフを、アランさんは特に武器を持たないままの対峙。藍沢先生は邪魔にならない程度の距離で俺となつを地面に降ろして様子見。走り出そうとするなつ抱えて俺も待機。
「動けますか」
「はい」
「無理はしないように。核を確認します、分離させましょう」
「分かりました」
祈るような姿勢の上半身と、白い煙を纏う下半身の接合部。丁度中間地点に向けて投げられたナイフの柄尻を蹴り飛ばすようにして再加速、音を置き去りにナイフは怪異の接合部を貫いた。
「効きが悪い……また変異種か!」
吠えるように叫んでから、アランさんは飛んでくる質量が加速する前に踏みつけて前方へ跳躍。上半身に刺さっていたナイフに指をかけ、そのまま勢いよく押し込んだ。
「……?」
反撃が来る前に撤退、かと思いきや読まれていたかのように攻撃は真っ直ぐ着地地点に飛んでくる。
「ああ、目的があると」
「……出雲ですか」
「ほぼ確実と見て良いでしょう。────志葉」
ぱちりと皇は瞬き一つ。怯える出雲を引き寄せてアランさんは口角を上げる。
「俺の剣なら、使えるでしょう。俺が囮になります」
「……」
「一撃で決めろ」
「はい!」
出雲を抱えて跳躍、今度は怪異に向かわず、あくまでも回避を重視する方向で。飛んでくる攻撃を足場に、あるいは紙一重の回避を行い地上へ視線を向けさせない。回避すればするほど、滞空時間が延びれば延びるほど、白い煙がアランさんに纏わりついていく。パキ、という固い音が耳を打つ。
「……不味いな」
「不味いんですか?」
「彼奴が無事でも、服は無事じゃねえだろ」
出雲を庇うように煙をマントで防いでいたからだろうか、動きの鈍くなったマントが無惨にも砕け散る。適当に残りの部分を出雲に纏わせて継続。白い煙が重たく空間に残る、凍り付いた煙が檻のように、縛るように周囲に漂っている。
「──、──」
「────」
ガリ、と氷が削れるような音。靴底からパラパラと落ちる氷には見向きもせず、怪異だけを見据えてアランさんは目を細める。
「なぁす!」
「ああ。……靴底が氷に取り込まれたな」
「それって!」
「すん?」
「チェックメイト、ってやつだ」
一際多い煙が二人を包み込む。息を飲んだ俺となつ、藍沢先生はそんな俺達を宥めるように一ヶ所を指差す。
投げ捨てられた筈の柄。灰と化した刀身。元よりは細く長く、残った灰は纏うように周囲を踊る。
煌めきは宝石のように、気配は静寂のように。足音も僅かに背後へと忍び寄っていた皇が、作り出された剣を操って怪異の首を刎ねる。纏わせていた灰が飛んだ頭に纏わりつけば、さらさらと伝播するように崩れ去っていく。
「──」
「志葉」
変わらないテンションで名前を呼ぶ。がしゃんと氷を割って、しっかりと出雲を抱えているアランさんに。……数秒の沈黙を経てから、皇はよろめいて転がった。
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