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秩序の天秤  作者: 霧科かしわ
第二章 この名を呼ぶのなら、貴方の剣となりましょう
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第十四話 意図はせず、救いを捜して

ちょっと忙しいので予約投稿。

 ……しまった、うっかりアランさんとはぐれて迷子になった。今遣霊に出会ったらどちらが迷子か分かったもんじゃない。

「確か連絡先がどっかに……」

支給された連絡機器を取り出す……これはどうやって使うんだろう。アランさんが使ってたときはもっとこう……電気があったと思うんだが。四角い本体をくるくる回して電源を探す、三つあるボタンのうちの一つを押せば、片面が明るくなった。

「ええと……」

片面は明るくなったが、それだけだ。しかも程なくして暗くなる。……本当になんだこれは、これで連絡が取れるんじゃなかったのか?

「…………?」

 多分、電源は分かったんだろう。そこから先は別の……ボタンを押すのか?アランさんは明るくなった面を指で撫でていたような記憶があるが。

「……いっそこっち使うか?」

ヘッドホンに手を当てる。波長さえあれば繋がる筈、ただし別の職員に気付かれる可能性もあるし、本来は任務用の通信機であるので叱られる可能性は高い。

「んー……」

 ぽちぽちとボタンを弄っては変化のない片面を見続ける。試しに指で撫でてみたが変化はなかった。もうお手上げである。

「あ、あの」

「んぇ?」

聞き覚えのある声。何の気なしに顔を上げた先で目があった相手を認識し、さっと周囲を探る。単独、目の前の相手はやや緊張気味だが敵意はない。

「出雲……魔術部門の、新人」

「ええと……はい」

 また一つ呑み込む気配。検診のときも同じ受け答えをして、何かを秘匿する気配があった。確かあのときはアカデミー出身という確認、今は魔術部門の新人という確認。……そのどちらに関しても、目の前の相手は何かを隠している。

「……」

「あの……?どうされましたか、何やら通信機器を眺めていましたが」

「使い方が分からない」

俺の言葉に素で驚かれた。……しょうがないだろ、師匠はこういうの持ってなかったし、俺にとっても必要ないものだったんだから。

「お前は、どうしてここに?再検診、か?」

「っそう、そうです!」

 急に声を張り上げられて思わずヘッドホンを掴んでしまった。すぐに気付いて謝ってくれる出雲、……珍しいな。大抵声を荒げる相手は俺の反応をみても何の感情も抱かないのに。

 検診のとき、仕事が立て込んでるからと断っていた。事実予定されていた日付から日数は経っている。俺の発言に便乗するかのような食いつき具合と、未だ解けぬ緊張。……ずっと探っていた気配の中に異物が混じる。範囲内に入ってきたというよりは、範囲内に現れるように。

「……怪異」

「っ!?」

 出雲を背に庇い更に集中。先ほどまでよりも範囲を絞って精度を上げる。人気がないのは幸いだった、指向性すらも絞り、接敵する前に出来るだけ情報を集める。

 気配はあるが移動音はしない。呼吸、心音、どちらもなし。……幽霊型とみていいだろうか、死霊型と断定するには姿形の情報が足りない。

「報告上げて。アランさんに、幽霊型とおぼしき怪異が廊下に発生した」

「あっ……」

 困惑と、動揺。まさかとは思うが、驚いておきながらこいつも通信機器を使えないのか?引っ張り出した通信機器は応えない。

「……多分俺よりは使える…………よな?」

「え、あ、……うん、使える、使えはする」

「じゃあ報告入れて」

改めて俺の通信機器を差し出せば、明らかに安堵した表情。……さっきから意図が読めないな。俺にまで困惑が伝播しそうなタイミングで接敵。

 両手を胸の前で組んだ、石像みたいな人型を象る上半身。けれど下半身部分は何やら冷え冷えとした煙に覆われており、どちらかといえばイデアがやっていた水平移動に近い揺れ方をしている。

 煙自体はどうでもいいが、移動方向を読めないのはいただけない。ただでさえ狭い廊下、回避するのも一苦労だろう。

「っ────」

 息を飲む、体を強ばらせ恐怖に怯える気配。ちらりと視線をずらせば微かな光が今にも消えそうになっていた。

「おい、大丈夫か?」

「っや、ごめんなさ、ごめんなさいっ────!」

驚いたけど咄嗟に肩掴んで揺さぶった。少し乱暴だったかもしれないが、非常事態だし許してほしい。頭を抱え丸くなってしまう前に、手遅れになる前にがんじがらめの糸を切る。

「アランさんは絶対にお前を見捨てない。そして俺は、そんなアランさんの剣だ。だから、絶対に死なせない」

「あ、……」

「助けてほしいなら、逃げたいのなら、アランさんに言うべき」

「────」

「連絡、出来るだろ」

「……うん」

 少し落ち着いたことを確認して手を離す。……足元から這い上がる煙はどうやらこちらの体温を奪い、機動力を削ぐ目的があるらしい。……幽撃を纏わせたナイフを投げる。上半身、中間、下半身。下半身だけが不自然に弾かれた気配、でもあれは無効化系の弾かれ方じゃなかった。

「幽霊型……じゃないのか?」

 勢いよく振られた下半身部分から飛んできた質量を捌こうとした瞬間、不自然な揺らぎと共に衝撃が走る。ナイフを突き立て一度距離を取らせてから視線を落とせば、じわりと滲む赤。

「質量があるな……」

肉体と精神の繋がりがある場合は幽撃の通りが悪い、だから先程弾かれたのか。

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