第十一話 医者と職員の悪巧み
「単独行動しちゃだめって言ったよね?」
「ななな!」
「なーつー?」
「な……すなぁ!」
「元気……」
うぱーも大分アグレッシブだったが、この遣霊……なつはその上を行くかもしれない。主に困らせるという意味で。他の遣霊もいるからという理由で俺とアランさんもそれぞれ膝上にスミレとみうを乗せている。青藍さんはというと椅子には座っているが会話に参加する気はないようで、ほぼ気配を消したままだ。
「良いか宇月」
「あ、すみません。大丈夫です」
師匠の知り合いに声を掛けられて、なつに言い聞かせていた職員が口を閉ざす。同年代くらいだろうか、アランさんも遣霊の存在を認識していなかったようだから、本当に新人の可能性も高い。
「取り敢えず、俺は藍沢だ。医療部門の実働側……簡単に言うと医者」
「藍沢先生は医療部門におけるトップの一人ですよ」
「みゅ」
「ああ、あとでお前の遣霊を診させろ」
「(ふるふる)」
「みゅーみ。み」
「(ふるふるふるふる)」
水浴び後の犬のような勢いで首を横に振るスミレ。抱えてる腕にさわさわと髪が触れてくすぐったいんだが。真似をするようにイデアは……恐らく尻尾を振っている。意味変わってないかそれ。
「皇志葉です。こいつはスミレとイデア。ええと……アランさんの部下になりました」
「一応挨拶しておきますね。私はアラン、職員です。この子はみう」
「みゅ」
「あ、宇月です。今年度から医療部門に配属された……藍沢先生の弟子です」
「おすな!」
「コイツはなつ。一応俺の遣霊」
「なぁす!」
一言一言に相槌を入れるなつ。やっぱり元気だな……うとうとしているスミレが大声に眉を潜めて、イデアをすっぽりと被る。ただ完全にイデアに潜り込むわけではなく、俺に接触してる部分はそのままなので、多分音が完全に聞こえてない訳ではなさそうだ。
「医療部門の遣霊持ちというのも珍しいですよね」
「そうだな。変な言いがかりも御免だ」
「丁度いいので重戦闘区域の担当者とかどうです?」
「許可次第だな」
聞けば、本来はそれぞれの戦闘区域に担当者が配備され、ある程度の治療はそこで行われるらしい。重戦闘区域に担当者がいないのは職員達の怪我はほぼなく、主に遣霊を担当するために迂闊に人を配備できなかったとかなんとか。遣霊というだけで偏見を見てきた身としては、その懸念は良く分かる。
「それで、本題に入るが。結論から言うと今回の怪異に関して、俺達が治療した中に該当者はいなかった。少なくとも俺が確認した中ではゼロだ」
「想定はしていましたけど……魔術部門となると、少し厄介ですね」
「ああ。ただでさえ閉鎖的な奴らだ、加えて、今年度は新人が入ったと言っていたからな」
「新人……」
アランさんの呟くような言葉に青藍さんも閉じていた瞼を上げ、スミレもイデアから顔を出す。去年までは被害に気付く職員はいなかった、だから青藍さんは新人に絞った方が良いと言っていたので……それが、他の部門に当てはまってもおかしくはない。
「潜入……するには、流石に知られ過ぎてるか……」
「お前は間違いなく無理だな」
「ある程度話もしたいから、正面から申請……?」
アランさんの言葉に青藍さんは無理だろうなーみたいな顔をする。スミレもみうの方に視線を向けて頷きあってるし、俺でも流石に分かる。アランさんは気配が根本的に他者と隔絶しすぎてる。
「……明日、魔術部門へ定期健診に行く予定がある。丁度人手が足りなくてな」
「えっ」
「皇、演技は得意か?」
返事に困る俺の腕の中でブンブン首を振るスミレ。……おい、事実だがそんな露骨に否定されると落ち込むだろ。
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