第九話 潜む同期
「はい資料」
「え。……珍しいな?」
ガチャリと扉を開けて入ってきた青藍さんの頭の上に黒い……ああ伸縮してる、あれイデアか。……青藍さんの上にイデアがいたのをみて少し意外に思う。イデアが勝手に動き回っているのは散々知っているが、スミレから離れたうえでわざわざ青藍さんと同伴している意味は少し分からない。
「状況が状況じゃん。……指示してなかったんだよね、あの怪異」
「……捕獲指示か?」
「うん。お前に上がってきた報告、微妙にあの憑依されてた職員じゃなくて別の……それこそお前が最初に会った奴からだったんだよ」
「……妙だな」
ぱらぱらと資料を見ながらもアランさんの指はみうを撫でまわすことをやめない。みうも撫でまわされながら資料を覗き込もうとしていたが、やがて無理だと諦めたのか大人しくふにゃふにゃと声を出していた。
「あの……憑依されていた職員は、中戦闘区域の責任者とは別なんですか」
「別……とまではいきませんが。少なくともセントラルの重戦闘区域以外の場所では、担当責任者は最大五名存在しています。一人だと不在時に支障が発生するので」
つまり例の職員も報告を上げた職員も、責任者であることに違いはないらしい。加えると今回の騒動において報告を上げた方の職員は眷属に憑依されていたわけでもないため、職員の中に憑依を見抜いた者がいるということになる。
「……俺の記憶では判別系統の職員はいなかったと認識してますが」
「少なくとも去年までは普通に被害発生してたんだから、新人に絞って良いんじゃない?ただ中戦闘区域配属かどうかは知らない」
「支部……あるいは、別の所轄……?」
「別の?」
スミレもがばりと顔を上げて首をそのまま傾ける。職員と言っても戦闘以外の仕事もあるだろう、それは辛うじて知っているが、一般枠の募集は戦闘一択なのであまり詳しくない。
「俺達が現場部門だとしたら、研究、魔術、医療、歴史……アカデミーや然るべき機関などから輩出された方々が集結する部門がいくつかありますね。俺達が関わるのは医療部門くらいですけど」
魔術部門。そう聞いて思い出すのは雪代さん達のこと。雪代さんは独学で一般職員よりも強くなったと言われていた、つまり魔術部門というのは、相当な強者の集まりということになるのだろうか。
「別の所轄だと……一気に面倒なことになるんだが」
アランさんと青藍さんの表情から察するにあまり他の所轄とは円滑な関係ではないらしい。スミレは既に興味を失ったのか、青藍さんの頭上から落下したイデアを捏ねくりまわしている。
「でもわざわざ現場に顔出す奴なんて逆に絞れない?歴史のとこと研究のとこなんてまず出てこないじゃん」
「つまり魔術のところだと?」
「医療部門は……?」
「仮にあそこだったら報告がそっちから上がるんだよね」
医療部門とは縁があると言っていたからだろうか。ふむ、と一つ頷いたアランさんが俺の方を向く。
「志葉さん」
「はい」
「一度、医務室に行きましょう」
「は……え?」
面白かったらブクマや高評価お願いします。喜びます。




