第七話 対話の裏で・中編
「どうして……?」
「驚かせてしまってすみません……」
やや困ったように、極々自然な振る舞いで謝罪する東雲さん。れおも困惑するように東雲さんを見つめている。少なくとも俺から見て違和感はない、ないのだけれどレイスにいるという事実が目の前にいる相手を東雲さんであると認めきれない。
「あんえ……?」
「……どう、したんですか?」
「実は……アランさんの通信機を探していまして」
「……」
俺とれおは沈黙を返す。アランさんの通信機がなくなったことは周知の事実だが、それはそれとしてわざわざ黙って東雲さんが出て来る理由が分からない。出来るだけ丁寧に、違和感を見落とさないように相手を観察してみるけれど、相変わらず違和感は覚えなかった。
「アランさんの通信機なら……もう、回収しましたけど」
「そうですか。良かった……!」
「おあ……」
純粋に安堵したような反応を見せられてれおの困惑が増している。本人……なんだろうか、本当に?アランさんと合流できれば真相は分かりそうなものだけど、どうしようか。
「……何でわざわざ単独で?」
「流石に不確定な情報でアランさんの手を煩わせる必要はないと思いまして」
どうしよう、何を聞いても本人が言いそうな言葉ばっかりだ。僕じゃ判断出来ない、と理解して僕とれおは顔を見合わせ頷きあう。
「今からアランさんと合流するんです。帰る場所は同じですし、一緒に帰りましょう?」
「それは構いませんが……アランさんを驚かせてしまいそうですね」
「僕もびっくりしたんで今更ですよ」
「ふふ、それもそうかもしれません」
くすくすと笑う東雲さんはアランさんと合流することも抵抗がないらしい。……僕の考え過ぎだろうか、それならそれで構わないのだけど。
東雲さんが近寄って来て、そのままアランさんとの合流地点に向かうために僕とれおを促す。立ち振る舞いも違和感はない、本当に、こんなところで出会いさえしなければ警戒なんてしなかったのにと思いつつ一歩踏み出した瞬間、東雲さんに腕を引かれたたらを踏んだ。
「わっ」
「すみませんテオさん。……囲まれています」
「うー……!」
気配察知を広げれば成程周囲にいくつもの気配がある。少し気を抜きすぎていたなと反省しつつ、れおを改めて抱きしめた。
「怪異じゃないですね」
「ええ。残念ながら」
怪異なら殲滅で済むけど、流石に人間相手にただ殲滅するのはよろしくない。ちゃんと所属や目的を聞き出しておかないと対処が後手に回ってしまうので。
「一人くらい残すべきかな……」
「そうですね……れおさんもいますし、ここは私に任せてください」
そう言って僕を背に庇いながら何かの術式を展開する東雲さん。見慣れた光が慣れない感覚を伴って、僕らの肌をそっと撫でた。
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