第三話 無辜が纏うもの
ヘッドホン着けてるからって訳じゃないけど、皇はとにかくよく目立つ。見た目的な問題……は、ちょっとあるけど、それ以上に纏うオーラというんだろうか、気配がどことなく違う。アランがいなくても堂々と突っかかって来る相手がいないのは、その異質な気配が関係している。とはいえ、寄ってこないだけで興味は持たれているんだけども。
「……」
「みゅ……」
小さいの二人は聞こえてくる雑音に不満そう。気持ちは分かる、本人達がいくら気に留めてないと言っても、悪意のこもった言葉っていうのは周囲の人間すらも不快にさせる。その対象が大切な存在だったら特に。あれが自分以外への悪意だったら爆速で対応するのにね。
皇は本当に興味なさそうにスタスタと歩き回ってリストを指でなぞっていく。分かってたけど皇は気配察知に関しては結構ずば抜けた実力があるよね。気配察知というか、気配判別というか。
憑依能力を有した死霊型の怪異。……それくらいならもう毎年のように発生している。ただ今回厄介だったのは眷属がいるという点と、……どうやら眷属を本体と偽るだけの知性、あるいはそれを押し通せるだけの偽装能力が相手にあるという部分だ。
「ただの無能なら楽なんだけど……」
誤解、誤認なら良い。だがそもそもの問題として、毎年発生しているとはいえ憑依する怪異が潜んでいることを中戦闘区域の職員が見抜けたことは一度もない。唆されたか、それともそう演技したか。……どちらにせよ碌な相手ではないだろう。
「みゅ」
「長くなりそうだよね」
「……」
俺とみうが絶妙に噛み合わない会話をしている最中にもスミレはじっと何かを見定めるように沈黙している。……そもそもこの小さいのは言語を発しないんだけれども、抱えているイデアがなにやら鼻……先?と思しき部分を上下に揺らしているので何らかの捜索をしているのは間違いないと思っている。
「みゅみみゅ」
「イデア、みうが落ちるからやめて」
むいむいと鼻先?を押し付けられたみうが若干仰け反る。うっかりひっくり返らないように抱え直していれば、スミレにトントンと肩を叩かれた。
「え?……うん?」
皇が不自然な位置で制止している。気になる職員でもいたのかと周囲を見渡したが俺には良く分からない。スミレの方を見てみたけれど、特に反応はなかったが。俺の肩を叩いた割には皇が立ち止まっていることに興味がなさそう……なんで?
「みゅー……」
「(ぐいー)」
「ああもう……どっちも危ないからステイ、ステーイ」
ひし、としがみついてきたみうを宥めつつイデアを引き離そうと大きく仰け反るスミレを止める。さっきまで大人しかったんだけどな、イデアの挙動に関しては俺も良く分かんない……シンの同類だったら分かる由もない。
もだもだしていたら視界の端で人が動く気配。何もせずとも道が出来、何も言わないのに悪評が立つ。……言ってて腹立ってきたな、道はともかく悪評は立つ意味が分からない。とはいえ、それは敢えて振る舞いを見せているときだけ。だから一瞬でもその気になれば――――。
「何してるんだ青藍……」
「俺のせいじゃないよ」
「みゅー」
「イデア、貴方擬態能力があるでしょう」
「(こくこく)」
流石に俺の挙動を見過ごせなかったらしいアランがこっそりと近付いて来てスミレの背を押さえる。アランのアドバイスにイデアは数秒固まり、そしてピンと両耳を立てた。
「みゅ?」
「何で布になった……?」
「(まきまき)」
みうの体に布を巻きつけるスミレ、されるがままのみう、困惑する俺。せめてこの光景を確認してからアランは仕事に戻ってほしかった、これどうしろと。良いのかスルーして。
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