閑話その1 笑顔を食んで、糧にさせて・前編
「……知ってたけどスミレの少食具合、レベルが違うよね」
「?」
「皇も少食だけどさ」
「……一応、標準くらいは摂取するようにしてますけど」
一粒の葡萄をゆっくりと食べてるスミレ。驚くべきはこれで食事が終了ってところ、しかも一食分じゃなくて一日分。流石に遣霊だからで済ませていいレベルじゃないよねコレ。皇の方は宣言通り標準量……よりやや少なめくらい。同期の入江を見てみろ割と食にはうるさいぞ。
「食に頓着がないのは真似しなくて良いのに……」
「アランさんって食に興味ない……んですか?」
「ないよ。栄養摂れればそれでいいとすら思ってる」
何ならアイツ、特性の都合上食事をとる必要性すらないとか言うからね。今はみうがいるから食卓につくようにはなったけど。あの小動物が最初に着手したのは、アランに食事の習慣をつけさせることだったよ。
「……」
「んぐ…………。だから、急に口に入れるなって……」
スミレの挙動、みうもやってたよ。取り敢えず口に突っ込めば吐き出すことはないもんね。ちゃんと食事はとるリアムはされてるの見たことない。入江は……たまに見るな、多分アレはイチャイチャしてるだけなんだけども。あやはももじゃなくてリアムとアランにされてたな……。
「好きな食べ物とかないの?単純に量少ないだけ?」
「好きな食べ物……?」
困ったように首を傾げる姿に少しだけ身構える。少しだけ考え込むようにうんうん唸ってたけど、思い付いたようにあ、と声を上げた。
「あれは好きです。ええと……さっぱりした白いの」
「さっぱりした白いの……?」
どれだろ、俺もそこまで食べ物詳しくはないんだよな……一回調べたことはあるけど、そんなさっぱりするような白い食べ物……?
「……そうめん?」
「ええと……や、違うんですけど……おかゆみたいな……」
「お粥みたいな……???」
なんだ、米……?じゃないよな、さっぱりっていってるし。さっぱりしててお粥みたいってことは……固形物じゃない、のか?
「雪……?」
「雪っぽいですけど……でも雪はしゃりしゃりしてるので」
「(もぐもぐ)」
ますます訳が分からない。雪っぽくてお粥みたいって何。スミレは……駄目だ、相変わらず葡萄をちまちま食べてるし、興味なさそう。
「うーん……味は?」
「ないです」
「無味!?」
びっくりして大きな声出たわ。無味の食べ物が好物なの、ちょっと予想外だったんだけど。流石に俺の大声に驚いたのか煩いと思ったのか、スミレが食べるのを一旦やめて顔を上げた。
「無味なのに好きなの?」
「甘くないので」
甘いの苦手か?甘くないってことは……これスイーツか何かの可能性もちょっと出てきたな。うーん……入江かコンちゃん連れてきたら分かるのかな。あの二人食べ物関連詳しいし。
「…………」
スミレが少しだけなにかを考えるように視線を動かして……まぁいいかと言わんばかりに食事に戻る。皇の遣霊だし気付いてる可能性あるよね、説明面倒になって諦めてそうなんだけど。ワカバ呼ぶ?
「遣霊……レンとみうがそれなりに食べるのは知ってますけど、うぱーって……?」
「一番食べるね。三食きっちり食べてお菓子も食べる」
「俺より食ってる……」
「特に甘いものだと見境ないよ。ももの真似して砂糖直食いしようとしたときは流石に止めた」
ももみたいに偏食が酷かったら多分様子見しつつ食べさせてたけどね。うぱーは割と何でも食べるから速攻でストップがかかった。砂糖は結局興味を無くしたけど、生クリームはまだ狙ってるんだよね。
「今は定期的にコンちゃんが餌付けしてる。定期的に食べさせておけば大人し……くはないけど、少なくとも材料に手は出さない」
遣霊の食事事情はまだ不明点が多いんだけどね。ももがシロップしか食べてないのも結構不思議だったんだけど、葡萄一粒で栄養補給完了してるスミレも大概だよ。……そろそろ定期健診あるけど、これ聞いたらどんな顔するかな。
「……」
「あ、思い出した。遣霊が栄養失調になったら問答無用で保護者も診察されるから」
「何……えっ?」
「何かね、保護者の体調を反映するんだよ。体調だけじゃなくてメンタルも」
とはいえ、不思議なことに反映する案件と反映しない案件ってのがある。現れた直後から体調崩してるわけじゃないしね、確か……根幹の問題に類するメンタルの不調以外が反映されるんだっけ。
「言っておくけど、遣霊相手に誤魔化しは効かないからね」
「あぁ……はい」
流石にそこに関してはちゃんと身に染みていたらしい。そうだよなぁ、見た目はただの幼子だけど、自分から離れたがらない心の半分、みたいな存在だからね。……そう考えるとやっぱうぱーアグレッシブすぎるよ、リアムが一日中いなくても気付かなかったからね。それでいいのか遣霊。
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