第十五話 武器ではなく、されど切り札となる
「うぴ」
「あーうぱーくんやめなさいやめなさい、流石にこの水はおなか痛くなっちゃうぜ?」
「うぴゅ?」
「うぱーくんよく飲んでるよ」
「マジかよリアムに怒られちゃーう」
ああほら、会話の最中に顔面から水の中突っ込んでるし。一応飲める水にしてはいるらしいけど、見た目がよろしくないよね。うぱーくんからしたらそんなこと知ったこっちゃないんだろうけど。
「どうしたんだいシンさん?何か御用だろう?」
「うん。確認と疑問かな。ほら入江くんおいで」
躊躇いがちに近付いてきた入江君にルコンは瞬きを一つ。浮かんだ疑問はどうして?辺りかな、リアムの部下になったとはいえ、俺と一緒にいる理由は分かんないもんね。俺の交友関係は広く浅くだし、ルコンからしてみれば俺とか青藍が親しくない人間を傍におくってのは結構な異常事態だろうし。
「えぇっと……なんだろう、今俺とんでもないことに巻き込まれてる?」
「別に取って食おうって訳じゃないから安心してよ。リアムがいないのは単純に単独任務入っただけだからさ」
「そう……」
信用ないね?別に俺が人間を取って食ったことに関してはないんだけどなぁ。だって不味いし、大抵の個体なんて固いし量少ないし栄養としても効率悪いし。
「それで、確認したいことってのが入江の察知能力についてなんだけど」
「うぴゅ?」
「なんなん」
「おっと二人とも大人しくしててくれよな。必要ならウロ呼ぶぜ?」
「ぴょお!」
「んん!」
遣霊二人は楽しそうね。でもルコンの言う通りちょっと大人しくしててほしいなぁ、確認内容的に、なんなら離れててほしいまである。子供用プールとか用意しちゃう?水着はないけど着替えはあるから遊んどいてもらおう。
「はい水鉄砲。ちょっと大人しくしててね」
「うぷ?」
「なんななな」
「ぴょ!」
やっぱりレンくん賢いね?初めて見ただろう水鉄砲の構造見抜いてタンク部分分解したよ。まぁ、何故か水が溜めれることに喜んじゃって本来の使い方まではいってないけど。楽しそうならいっか。
「適当に人間とってくる?」
「いや、何かねぇ…………一回何も告げずにどっかのタイミングでバレないように特性起動してくんない?多分それが一番良さそう」
「え、起動するだけ?」
「起動するだけ」
ルコンの方をじっと見てる入江君は、分かってたけど特性を使う訳じゃない。察知能力はそういう系譜の特性説もあったけど、本人の反応的に自力で習得、あるいは先天的に持ってる異能の部類。一応正気判別ならリアムもアランも出来るから、いない訳じゃないんだよ、珍しいだけで。
「特性を起動しただけで分かっちゃ」
「あっ」
「おっと……?」
入江君の反応にルコンが明確に動揺を見せた。俺も入江君に視線を向ければ、こくこくと頷かれる。正解は?反応的に当たりっぽいね。
「嘘じゃん。精神干渉系に対する天敵すぎない?」
「アランの管理人も察知したし、予想よりも幅が広いね」
「管理人って察知出来るんだ!?」
うん正しい反応。だって今までは一撃食らうと言うか、一撃目の威力で判別してたくらいだからね、取り敢えず一撃は必要。出会い頭に見抜くとかは無理難題が過ぎる。完全に起動した状態なら遠目でもリアムは分かるらしいけど……。
「因みに聞きたいんだけど、入江くん的に何が見えてるの?見えてるっていうか、どうやって判別してるの?」
「ええと……周囲の色、です」
「色」
「はい」
一応聞いてみたけど案の定分かんないなぁ。色、入江君には生物の周囲になんらかのオーラみたいなものが見えてるってことでしょ?再現性が見込めない特殊能力は魔術的観点から見ても難しい、入江君の負担になりそうだから劣化版でも模倣出来たら楽だったんだけどね、入江君には是非とも頑張ってもらいたい。
「凄い逸材連れてきたねアラン……初動潰せるのあまりにも無法だけど」
「初動どころかブラフ見抜けるのあんまりにも駆け引きにおいて有利すぎるよね。入江くん、それ自由自在常時発動!みたいな能力なの?」
「いえ……実は、結構集中しないとすぐ見えなくなります」
「じゃあまずは慣らすところからかなぁ。折角の才能だもん、どうせなら使いこなせるようになりたいよね」
「はい……!」
おお入江君乗り気。やっぱり重戦闘区域に来るレベルの実力があっても強さを求めるのかね、ここにいる奴らを目標にするのは現実的じゃないから止めといた方が良いとは思ってるけど。
「名称は……管理人の派生っぽいし監視者?」
「んー……どっちかっていうと看破者とかの方が良くない?入江くんどう思う?」
「えっ」
「なーん!」
困ったように眉を下げた入江君に気付いたのか、レンくんが大声を出してぺしゃりと水を掛けて来る。ちゃんと水鉄砲の使い方が分かったのかぁ……自分じゃ引き金引けなかったのかちゃっかりうぱーくんに指示出してるし。
「ぴょ!」
「うぱーくん上手だねぇ。でも狙うのはあっち」
「ぴょん!」
「だんな!ななっだー!」
「ななっだー?」
「だん!ななな、なん!」
「おっとこれは……?」
なんだろうねななっだー。多分何か伝えたいんだろうけど、遣霊の言いたいことが分かるの、そんなに多くないんだよね。しかも結構個人差があるというか、みうくんが時々やってる圧縮言語は分かんないしうぱーくんに至っては鳴き声が入りすぎて誰も解読出来ないとかある、ままならないね。
「な……なぁん!なんなん、ななんなー」
「なになに……?うぱーくんが……ななんなー?」
「うーん……?あ、水鉄砲指さしてる」
「な……あ、スナイパー?」
「だん!」
あってたみたい。スナイパーを念頭に置いた上でななっだーの解読……何だろう、レンくん自分自身を指してたっぽいけど……。
「スナイパーに関係があって、入江くんの察知能力に当てはまるワード……」
「……スポッター?」
「だんななな!!!」
よく分かるね入江君!?今もう俺最終手段ワカバくん召喚も頭に浮かんでたよ。
「観測手……ありじゃないかい?」
「そうね。名前から推測もされづらそう」
そこまで考えて提案したんだとしたらレンくん相当な切れ者だよね。遣霊って見た目の割に知能が高めなのは知ってたけど、ここまで高いのかぁ……。
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