第十三話 深層の掌握者
特性とは、個々人が有する潜在能力であり、名付けと定義によってスキルツリーを固定しないとまともに成長しないという絶妙な面倒くささを持つものである。
名前があれば形が定まる。定義すれば方向性が決まる。勿論そのどちらか、あるいはどちらも必要なく特性を使うことが出来たら際限なく強いんだろう、実際強い。強いが、やっぱり不都合も多い。だからこそ……あの傭兵が自らの弟子の特性について言及してないとは考えにくかった。
「ないの?本当に?」
「ああ。ないな」
「嘘じゃん……」
俺だけが通れる秘密の道を抜けて目が悪くなりそうな部屋に向かう。ほぼ軟禁というか、いや本当は監禁だった筈なんだけど、そもそもこの建物自体が俺の特性みたいなものだから実質軟禁。軟禁状態でも仕事してるの、訳分かんないよね。
皇の特性について知りたかった。アランとの戦闘で急所を的確に狙う自己完結型の特性だろうとは言われていたけど。名前と定義で、あと傭兵が関与しているかどうかで最終判断を下したかったのに。
「あるじゃん、確か一般区画に特性固定するところ」
「敢えて行かなかったのだろうな」
「なんでぇ……?」
特性を固定しない理由って何だろ、強いとは言ったってやっぱ不都合の方が多いし、事実として皇は使用後気絶とかいう明確なデメリットを背負ってる。どう考えたって固定しとくべきだと思うんだよね。
「まだ名乗るには至らないからだろうな」
「……えっ、名前あるんじゃん?」
「ああ。あれはずっと初めから名乗っているのだよ。誰彼が定義出来るようなものでもない。いや……今となってはもう、ただ一人にしか名付ける権利は残っていないというべきか」
ただ一人だけが持つ名付ける権利。……珍しい特性もあるもんだ、そういうのって大抵名前とか異名とかだと思うんだけど、皇は特性にその面影を……過去を残したってことでしょ?特性で個人を特定とか……相当特徴なきゃ出来ないよね。
「そもそも記憶ないのに相手を判別出来ないっていうか、ただ苦しいだけじゃない?」
「遺せないこともあるのだよ。ましてや過去が不本意な離別だったら猶更」
「ふーん……」
分かんないな、望んでなかったから特性だけ遺すっていうのも、そうしないといけない理由も。特性しか遺せなかったとして、そこに皇の感情が伴うのかなんて結構な賭けなのに。大体あんだけ特性が不安定だと出会うまでに皇が死にかねない。
「……あ、でも不安定だと遣霊って現れやすいんだっけ?でも皇はここに来てから現れてるか……」
「ある意味それも一つの答えだな。皇にとって、ここに来るまでは心を乱されるようなことは何一つなかったのだよ」
「は?……待って、だってあの小さいのが現れた瞬間だって――――」
「そうさな。予兆などなかった、原因も表向きは不明だろう。事実本人だって思い当たる節はないだろうからな。だからこそ分かるのだよ」
「……共鳴?あるいは深層心理内における過去からの呼びかけ…………?」
当人の内面で発生した機敏とか知る訳がない。本人が夢を覚えていないのなら余計に。目の前の相手……ジャックの笑みが多分答えだろう、こいつはどこから仕入れてるのか分かんないような極秘情報とかしれっと握ってる。それ自体は別に良いんだけどね。
必要なら勝手に情報流してくるから皇に関しても入江に関しても排除対象ではないんだろう。俺とシンは皇があの傭兵に拾われてるってことくらいしか分かってないけど。
「青藍、一つ教えておこう。皇が何故、遣霊に興味を抱かれるか、という問いへの答えだ」
それ俺言ってないんだけど。……まぁ今更か、情報くれるんだったら別に良いや。実際気になってた部分ではあるし。金色の瞳が少しだけ細められる、口角は少しだけ上向きに、完璧すぎる笑みだけど知ってる人が見ればそう、あくどい笑みにしか見えない。
「楽園種族。その残滓だよ」
「…………は?残滓ってどういう……」
「これ以上は自分で調べ給えよ。辿り着いたころには必要な情報となっているだろうさ」
追加説明をする気はなし、と。……まぁいいや、皇が楽園種族……いや残滓って言ってるから違うのかもしれないけど、とにかくその辺りと関係あることは理解した。その内どっかで必要になるんだろうけど、今はまだ情報として明確に必要じゃない……辿り着いた頃っていうからにはちゃんと調べないと出てこないんだろうし。……俺とシンだけじゃ不安だから誰か巻き込もうかな。
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