第九話 信じるは己が身と武器
アランさんに同行して何度目かの任務をこなす。重戦闘区域に回される案件というのは、ただ怪異が強いだけではないということを最近学んだ。潜伏域が危険地帯であったり、情報が少ない怪異であったり。ただ倒すだけなら俺だけでも可能だが、倒した怪異のマニュアルを作れ、と言われるとまだまだ難しい。弱点程度なら分かるけれど、見分け方や硬度などとなると……圧倒的に経験が足りない。アランさんもそれを理解しているので、慣らす様に俺に問いを投げかける。
「今回討伐した怪異の分類は?」
「ええと…………人体型?」
「半分正解ですね。弱点位置は確かに人体型の特徴である心臓部でしたが、部位破壊時に欠損部位が消失しました。人体型の特徴を有する幽霊型、故に相手は死霊型でしょう」
「あー……」
元々倒せればそれで良い、という思考があるので判別のために部位破壊などはしない。強い相手ならば自然と弱点を狙うための手段として部位破壊が発生したりはするけれど。アランさんがわざわざ腕を落とした意味はここにあるんだろう。弱点を見抜くのは当然として、アランさんはそこから判別のための動作すら自然に討伐動作へと混ぜ込む。
「強い死霊型だと……物理攻撃無効、でしたっけ」
「そうですね。一部を除いてほぼ全ての物理攻撃は無効化されます。まぁそのレベルとなると重戦闘区域か別の……それこそ、レイス辺りの管轄になりますよ」
レイスと言えばヒュリスティックの支部、主に幽霊型を担当する場所だ。本部はマルチな才能を求められるが、支部はそれぞれのタイプに特化した職員がいると聞く。レイスが幽霊型に特化している、というのはそういう意味だ。
「物理が効かない相手には特性で対抗するか幽撃、重幽撃が有効です。皇はどちらで対応を?」
「幽撃、重幽撃です」
「賢明な判断です」
幽撃は物理攻撃というよりは特殊攻撃だ。肉体ではなく意識に直接攻撃を与えるので、幽霊型にも効果がある。逆に重撃というのは寸分違わず同位置に同威力の斬撃を同時に当てることで再生を阻害する。重幽撃とうのは幽撃を重撃のように放つことで霊体ですらも再生を阻害する。
特性による対抗は簡単であるが、幽撃や重撃はそれなりに技量が必要となる。俺は師匠から幽撃も重撃も扱えるようにとしごかれて来たけれど、それでも多重撃や霊体以外への幽撃は難しい。
「中戦闘区域、あるいはレイスなどなら特性対抗で良いんですけどね。残念ながら重戦闘区域にくる任務のいくつかは特性遮断地域での戦闘が混じっています。その場合頼れるのは己の身と武器だけですよ」
「特性遮断地域……?一般区画とはまた別の……?」
「所謂研究エリア、機密エリアですね。流石にあの辺りの任務は単独で受けることはないので、そのときになったら改めて説明しますけど」
「はぁ……あ、いや、……あの、そもそも俺特性が……」
「特性が?」
「使えないです。少なくとも実戦では」
「?」
ずっと言いそびれていたひとつの大きな問題。誰もが持っている大切な切り札である特性、それを俺は表立って使えない。特性なしでも戦えるようにと実力は磨いてきたけれど、それとこれとは話が別だ。
「実戦では……じゃあ、特性自体は存在している、と」
「それは……はい」
「成程……いえ、別に特性の使用に関しては個々の自由ですし使い勝手の善し悪しもあるので別に良いんですけど。……実戦で使えない特性、とは?」
本当に特性の使用に関しては一切興味がないのか、一息で言い切ったアランさんは少しだけ首を傾ける。少しくらい落胆されるかもしれないと思っていたのに、落胆どころか関心すら向けられなくてちょっとびっくりした。
「意識を失うんです。戦闘中は戦うこと以外のことが分からなくなるし、終わった瞬間意識失うし。敵味方の区別もつきません」
「あー…………」
納得、といわんばかりの声を出すアランさん。一人じゃないと使えないくせに一人だと帰ってこれないというのだから質が悪い。
「……ちょっとした興味なんですけど、それどれくらい強いんです?」
「どれくらい……ええと、そこまで詳しくは……」
「やります?模擬戦。勿論安全は確保するので、やりましょう」
……実はアランさん、結構な戦闘狂だったりするのか?
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