第二十二話 心配よりも信頼を
リーン……と涼やかな音が鳴る。反響を探るように沈黙していた夏音が俺を促して歩き始めた。
「それ、範囲どれくらい?」
「そんなに広くは……一応、音が聴こえる範囲よりは広いですけど」
「充分広くない?」
どういう経緯を経たのかは謎だけど、夏音の武器は鈴のついた杖らしい。さっき使ったのはそれとは別の小さな鐘だったけどね、指向性がどうとかいってたからあれで直接殴るとかじゃないらしい。ちょっと安心。
正直夏音を巻き込むのは気が引けたけど、俺が認識阻害を看破出来ないから仕方がない。さも当然のようについてくるつもりだったゆきはジュリアスに預けて……今に至る。うぱーが昼寝してて助かった、うぱーにまで聞かれてたら絶対脱走するからね。
「ええと……侵入者は複数人いるんですよね?」
「らしいね。本体捕獲しない限り増えるとも聞いてる」
「本体かどうかは分かるんですか?」
「ああそれに関しては大丈夫。無制限に呼んでるってことは本体は動けてないだろうから」
魔術の中でも召喚系は難易度が高いから準備も起動も時間が掛かる。初日から被害が出てない理由はその辺だろうね、リソースの問題もあるだろうし。
「……この先です」
「おっけ。ちょっと待ってて」
一歩踏み込んで感覚に任せて床に叩きつけた。……コイツは外れっぽいな、そう判断して尋問用の個室に送り込んでおく。
「どうですか?」
「コイツ外れ」
「分かりました。次ですね」
もう一度鐘を鳴らして再度移動。流石に本体は念入りに隠れているのか侵入者ばっかり見付かる。まぁ本体じゃないとはいえ放置していい訳じゃないからね、入江達の方も侵入者ばっかりで本体は影も形もない。……分かってたけど本体を探すのは容易じゃないか。まぁ見つかった時点で事件解決みたいなものだからね。
「精度悪いけど探知掛けてみるかな……」
「……あの、全体探知にぼくも参加していいですか?」
「参加?」
「はい。……元々冬音の特性も入れられていたので、多少心得があるんです」
冬音の特性……が何なのかは知らないけど、クローンだからって同じ特性じゃないはずだ。それは本人だってよくよく理解してるだろうに今の発言をしたってことは……同じじゃないけど近い特性ってことなんだろうか。それはそれで腹立つな。
ちょっと物申したいことはあるけど、夏音に言うことでもないから口には出さずに許可を出す。躊躇いがちに俺の手を両手で包み込んだ夏音を確認してから、全体探知を実行した。重戦闘区域をスキャンするその波からさらさらと砂が零れていく。目に見えないほど細かい粒子は俺のスキャンに追従するように範囲を広げていた。
「……どう?」
「――――見つけました。恐らく本体です」
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