第二十一話 敵地へ
「本拠地」
「はい。ただ侵入するだけには飽きたらずリアムまで巻き込んだんです。相応の代償はあって然るべきでしょう」
淡々としているが確実に切れている。アランさんが身内を害されると容赦がないのは以前聞いた気がするので、今回の騒動は相当苛烈な処置になると見て良いかもしれない。
「布袋、情報を」
『うわ……取り敢えず分かったことだけ。侵入者は意図的に遣霊として存在を偽装してたから遣霊自身が関与してる訳じゃなさそう。医務室の方からの状況から見ても多分鳥飼くんが連れてた遣霊自体がダミーなんじゃないかな。方向性としては存在の抽出……早めに保護しないと不味い。それはそれとして侵入者の首魁をとっ捕まえないと遣霊の衰弱問題も解決しなさそう』
「成程。ではそちらは青藍に一任します。俺達は本拠地に行って保護を優先しますので」
『……頼むからやり過ぎないでね??』
「ふふふ」
『皇くーん!東雲くーん!!お願いだからアラン止めてー!!!!』
ブチ、という音がして回線が強制的に落とされる。布袋さんには制止を依頼されたが正直俺達が止めたところで焼け石に水のような気がする……下手に止めて暴走されるくらいなら限界ギリギリまでは静観していた方が良い気はするな。
「ええと……?」
「ああ失礼。スイさんはどうやら侵入者側の本拠地に囚われているようなので……鳥飼さん、ついて来ていただけますか?」
「あ、足手まといにならないように頑張ります……!」
布袋さんとの会話を知らない鳥飼はやや困惑気味だったが、本拠地に突入するということを把握してこくこくと頷きを返す。鳥飼にとってスイは大切な遣霊、きっとアランさんが誘わなくても自力で本拠地に乗り込んでいたに違いない。
「アランさん」
「はい」
雪代さんの傍にいた東雲が小走りで近寄って来たと思えばアランさんに術式解析の終了を告げる。ちらりと雪代さんの方に視線を向ければなにやら立ち上がって勾玉を砕いている。ふわりと風もないのに髪がたわんで、溢れんばかりの輝きが雪代さんを染め上げていた。
「綺麗……」
思わずと言った風に言葉を零した鳥飼。綺麗……そうか、あの光の反射は綺麗なのか。きらきらしてるなーとは思っていたけれど、正直感想としてはそれくらいだった。
「雪代」
「おう。準備は出来てる」
「助かります」
アランさんは雪代さんが展開した魔法陣に躊躇いもなく踏み込んだ。東雲がそれに続いて、鳥飼は恐る恐ると言った風に足を踏み入れる。俺も続こうと一歩踏み出した瞬間、雪代さんに引き止められた。
「あ、皇」
「はい」
「一応これ持ってけ。中身は空だから収納出来る」
「ええと……」
「保険だよ保険。何か気になるもんがあったら入れればいい」
「分かりました……?」
用件は済んだと言わんばかりに手をひらひら振る雪代さん。……正直この透明な勾玉を使うかどうかは分からないが、意識を切り替えてそのまま魔法陣へと踏み込んだ。
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