第十七話 模索・後編
スイくんを探すために大雅と行動しているけど、その大雅の表情がどことなく暗い。正直大雅は監視されていた側なんだから気付けなくても仕方がないとは思っているのだけど。
「大雅、何か気がかりなことでもあるの?」
「えっ、まぁ……そうですね。正直、先入観で相手を認識していたのだな、と思っています」
「先入観で?」
「はい。……『鳥飼氷雨の妹だから』と、一方的に鳥飼さんに対して警戒と……同情を抱いていました」
「同情を……」
こくん、と頷いた大雅はゆっくりと視線を窓へと向ける。同情というのは一種の共感だ、憎悪すること、復讐心を抱くこと、それ故に道を間違えること。……大雅は、どれを指して同情と言ったんだろう。
「私にも兄がいます。同じ状況とは言いませんが、……警備隊と実家によって排斥され、今は消息不明になりました」
「……」
「私が警備隊に所属しているのは家からの強制もありますが……それ以上に、復讐のためだったんです」
復讐のため。そう言った大雅の言葉を否定出来なかった。俺は復讐ではなかったけれど……決して真っ当な理由でヒュリスティックに所属したわけじゃない。
「……話が逸れましたね。すみません」
「別に……大雅も知ってる通り、俺だって他人事じゃないし」
俺がギリギリ復讐の為と言わないのは、華蓮が生きてるって確信があったからだ。一歩間違えば大雅や鳥飼さんと同じ立場だった、それは否定出来ない。
「……俺は華蓮が生きてたから、華蓮と出会えてこうして過ごせてるからまともに見えるだけだよ」
「ええ。私も似たようなものです。ソウさんと出会って、あの人を守ろうと決めたからこそ――――こうして大人しくしているので」
ソウさんという番を見つけて、精神が安定したからこそ今ここにいる。決してお兄さんのことは解決していないけれど、大雅は前を進むことを選んだ。
「……」
鳥飼さんは、お兄さんのことをどう思っているんだろう。遣霊が現れてしまうほどの絶望は、お兄さんがいなくなったことと関係あるんだろうか。
「例え鳥飼さんがどう思っているにしろ……ちゃんとお話ししないといけませんよね」
「うん。……出来れば、鳥飼さんも納得する方法で、事態を解決させたい」
「はい。そのためにも……早くスイさんを見つけましょう」
スイくんが本当に遣霊かどうかは分からない。何で鳥飼さんを利用しているのかも、何故今いなくなったのかも。アランさんは動揺が少ないように見えたから、もしかしたら何か思い当たる節があったのかもしれない。
「……この手を使う輩は、気に入りませんからね」
大雅の小さな声を、俺は聞き取れなかった。
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