第十五話 模索・前編
遣霊の逃走、単語だけならまだよくあることのように思えるけど、実際は割とシャレにならない状況になってる。普通遣霊が敵とか思う訳ないじゃん、詳しいことは全く分かんないけど状況として最悪なのは分かる。
「うぴぴぴ」
「ちょっとうぱー、お前は留守番だからね」
「ぷぇ?」
「おいなんだその顔、言葉理解してるだろお前」
「ぴーぷ!」
マジホントコイツ……!その聞き分けの悪さは何処から学んだんだ本当。あの兄弟強情だけどすっとぼけるタイプじゃないじゃん、シンかコンちゃん辺り参考にしてる?
「ぴょー!」
「ああもう……コンちゃん!」
「はいはいはーい!どうしたの青藍?」
「どうしたのじゃないよ。うぱーがついて来ようとしてくるんだけど」
走り出さないように抱え上げたら短い足ばたつかせてるし。ついでのようにツインテールも振り回すな、お前のツインテールデカいんだから勢いがつくと結構な鈍器なんだぞ。
「ゆん!」
「あわわゆきくんもやる気満々。こりゃ困っちまうな!」
「困ってないでどうにかして」
ひょっこりとコンちゃんの背中から顔を出すゆき。楽しそうだねお前、うぱーもゆきを見つけてバタ足が二倍速になってるし。遊びたいんなら大人しく遊んでてくれないかな。
「ていうか青藍、実際どうなの?人物探知、出来なくはないでしょ?」
「認識阻害はいつだってクソ」
「おっと大分ヤバめな感じ?」
認識阻害は対峙しても相手の記憶が残らないとかそういう方向性の妨害、故に探知に引っ掛かっても人間として認識出来ない。捜索してるけどどうやって看破するべきかな、魔術ならともかく、特性だった場合打つ手がないんだよね。流石に特性なら鳥飼利用しないで潜入してきそうとは思ってるけど。
「皇は視覚検知じゃないっぽいから認識阻害効かないし、何故かは知らないけど入江は遣霊の方に認識されてないっぽいから大丈夫……アランもどうせ何らかの手は打ってるんだろうけど、それが参考にはならないだろうから結局自力で対策しないといけないのがね……」
「え?それなら――――うん、夏音くん連れていけばいいんじゃない?」
「夏音?」
「うん。だって彼、”自己含めた周囲を砂に変化させる”特性デショ?」
「いや知らないけど」
「ゆん!?」
「ぴぇ!?」
ショックを受ける様に声を上げるうぱーとゆき……知る訳ないでしょ他人の特性とか。脅威になるとか何らかの事情で知らされてるとかじゃない限りはノータッチだよ。
「砂に変える……つまりそれで人物探知しろってこと?」
「そー!」
「ぴょー!」
「ゆーん!」
視覚探知式じゃなければ認識阻害は引っ掛からない。稀に対策してるタイプの認識阻害もあるけど。俺単体で対策が出来ない以上他者の力を借りるのは必然と言えるだろう。……でも。
「……」
正直、巻き込むのは避けたい。本人は気にしないだろうけど俺は嫌。それは夏音がアランのクローンだからとかじゃなくて、純粋に職員でもない相手を巻き込むのは気が引けるっていう点だけど。
「せ・い・ら・ん?」
「……やだ」
「おいおい、そんな選り好みしてられる状況じゃあないんだろ?そんなに心配なら守れば良いじゃーん。ま、青藍が思ってるよりもあの子強いけどね!」
「ゆん!」
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