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秩序の天秤  作者: 霧科かしわ
第一章 進むために、見つけるために
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第八話 語られぬ真意

「――――以上」

「おい予想以上じゃないか……!」

「あややの予想がどの辺りだったのか知らないが、少なくともシンと青藍の二人が認めた相手だぞ」

 重戦闘区域……もとい、妖怪達において一番影響力がある二人が認めた。そうなればアランもリアムも口出しはしないだろう、二人とも変なところで強情だが、流石にあの二人相手だと分が悪い。

「……遣霊の件も、正気度の件に関しても理解はした。シンと青藍が推薦したっていう点も。その上で聞きたいんだが…………お前、大丈夫なのか?」

 二人が部下を取っていない理由は過去の事件に起因する。部下を取るのが怖いというのは正確じゃないけれど、人が増えることを殊更に怯え、自身達にとっての()()がいなくなることを警戒している。本当はゆっくりと慣らしていくはずだった部分だ、もうこればっかりはどうしようもない。

「少なくとも…………皇は俺のせいで死ぬことはないだろ」

「それは……そうかもしれないけど」

「どちらにしろ俺の後継は要る。リアムが俺を殺せないなら、余計に」

「その役目は」

ナイフを首に添える。じっと薄紫の瞳が俺を見据え、何の感情も浮かべずに言葉の先を促す。

「俺がする。そう、言ったはずだ」

「お前に俺は殺せない」

 じわりと黄金色が俺を捉えようと蠢く。ゆっくりと隠された()()が、表に出てくれば確かに俺なんて手も足も出ないだろう。かつてならばいざ知らず、今のアランを止められる相手なんてリアムくらいしかいないのだから。事実から目を逸らす様に腕を引けば、そのままナイフを指先で奪われた。

「皇だってお前を殺せないだろ」

「今はまだ、な」

澄まし顔でナイフをくるくると回す姿は……心なしか楽しそうだ。自分で取り回すのが苦手だからか、こいつは短剣などの刃渡りが短い武器に対して興味関心が強い。……昔は、隙あらばナイフを見せろと騒がしかったものだが。

「……皇が、お前たち兄弟に匹敵する強さを会得する、と?」

「少なくとも、俺はそう思ってる。皇だけじゃなく、入江も」

 信頼が、酷く重く胸の奥にこびりついた。ずっと傍にいた俺はまだ届かない高みに、新人でありながら辿り着くと確信をもって言われるほど才能がある二人に。嫉妬ならばどうにか整理がついたのかもしれない、心配なら、せめて悲しみなら…………どうして今更、納得が先行してしまうんだろうか。

「――――そう、か」

「……あやや。俺は、あややだって俺達と同じくらい強いと思ってる。ただあややは優しすぎるから……」

「……いや、流石に元暗殺者にその評価はないだろ」

多分本気でそう思ってるんだろうが、仮にもここに来る前はかなり有名な暗殺者だったのだから、優しすぎるはやめてほしい、切実に。ここに来てからも別に丸くなってはない……寧ろ、兄を自称する妖怪(シン)とか俺にやたら絡んでくる妖怪(青藍)とか、そういう奴らのせいで実力としては上がったはずなんだが。

「優しいよ。優しいから俺を殺せなかった。命を背負う覚悟を決めた。俺もリアムも、その選択を尊ぶものとして理解している」

 優しさではない。そう言ってしまうのは簡単だったけれど、理由の枝の一つにしていたのも事実ではある。根っこの部分はもっと独り善がりな、それこそ本能的なモノだと知っていて、それを知られたくないのなら俺は黙るしかない。

「彼らに、あややのような優しさはない。どこまでいっても俺達の同類として、交わらない平行線を辿るだろう。……もしかすると、皇は俺と同じ道を辿ってしまう可能性すらある」

「――だから、先に後継として囲うのか」

管理人(これ)の適合者は希少だからな」


「もんもももぃ……」

「良く寝てるな……」

 ころころと小さい生き物が寝落ちしてる中に堂々と混ざるラリマー……よく見る光景ではあるが、最近外に出ていたせいで余計に新鮮に見える。何か黒いの抱えてるし。

「おーお前らも話終わったの?」

「ああ……いや、そもそも何で知ってる……?」

「そりゃ知ってるに決まってるだろ。俺とワカバだぞ?」

「ダゾー」

「俺が言いました」

しれっとリアムにばらされた二人がわーわーと文句を言ってるがリアムはどこ吹く風だ。入江はおろおろと視線を交互に向けているが皇は興味なさそうにじっとやりとりを眺めている。

「うきゅ!!!!」

「え」

「ぴょ……?」

 自分の寝言に驚いたうぱー……いや今うきゅって言わなかったか?大声だったので他の遣霊達ももごもご、もぞもぞと目を覚ましそれぞれの主人のところへと向かう。

「もんも……」

「しゅー……しゃしゅ」

「まだ眠いのかすもも」

「しゅしゅ」

「もんもい」

「もも、よだれを俺の肩にこすりつけるな、ハンカチあるだろ」

「もーももも」

よじよじと肩に登るレン、はっきりと目が覚めたのか周囲を駆け回り始めたうぱー、とてて、と両手を広げてだっこしてもらいに走っているみうといった中で、堂々と皇の腕の中で二度寝を決めようとしているスミレ。……やけに眠るとは思っているが、それが特殊な生まれに起因するのかは分からない。イデアなる謎物質は多分皇の特殊性に起因するのだろうとは思っているけれど。

「……部下、ね」

「もい?」

 久しぶりの帰宅ではあるが、また少し出ないといけないかもしれない。

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