表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
秩序の天秤  作者: 霧科かしわ
第七章 生きたくて、息をする
188/463

第十一話 貴方の傷は、何ですか

「重戦闘区域に侵入者が出たみたい」

「し、侵入者……!?」

「うん。鳥飼さんも気を付けてね」

「はい!」

 反応に不自然な点はなし。”警備”と称して私が立っていることに関しても嫌悪や困惑を示すことなく元気に挨拶してきた。……警戒を解く気はないけれど、あまりにも真っ直ぐとした反応にどうにもやりづらい。

「そういえば薬、作れそう?」

「はい!ありがとうございます!」

「それならいいけど……」

宇月さんが許可を出したということは毒とかではないのだろう。彼女が何を考えているのかは依然分からないままだが、警備隊の一人として私は謝罪しなければならなかった。

「鳥飼さん」

「はい?」

 きょとんとした表情で私を見る鳥飼さん。……本当にこれでヒュリスティックや警備隊を恨んでいるのなら、途轍もない演技力である。

「少しお話がありまして。本日の夜は空いていますか?」

「今日の夜……はい、大丈夫です!」

宇月さんが少しだけ視線を向けたものの、結局何も言うことはなく視線は逸らされる。膝の上にいるなつさんも口を尖らせてはいたがそれだけだった。

「……なぁすん」

「そういえば……鳥飼さんの連れてる……スイくん、あんまり喋らないんだね」

「え?うん。そうなんだよね……喋れはするんだけど、人見知りしちゃってるのかも」

「あぁ……」

人見知り、と聞いて脳裏にすももさんが浮かぶ。彼は人見知りしすぎて逆に騒がしかったが、確かに普通はご主人の影に隠れたりするものかもしれない。口数が少ないどころか一切喋らないスミレさんがいるので違和感を覚えなかった。

「鳥飼さんは……いつ頃から遣霊と一緒にいるの?」

「ちっちゃい頃から……かな。物心ついた頃には一緒にいたから、私もどうしてこの子が生まれたのかは分かんない」

「へぇ……」

幼少期から、きっかけすら記憶にないほどの時期に生まれたと聞いて少しだけ眉を潜める。有り得るのだろうか、遣霊が主人の心を守るために生まれる存在なら、あながち有り得ないとも言い切れない。それに……もしかしたら、強いショックを受けて記憶を意図的に封じている可能性すら。

「宇月さんは?」

「俺は……うん。俺も小さい頃かな。とはいえ、俺は六歳の誕生日だったわけなんだけど」

「六歳の……」

「うん。色々あってね」

踏み込んでほしくない、そういう気配を感じたのか鳥飼さんもそれ以上の追及はしなかった。宇月さんの名字が藍沢ではないこと、恐らく実の親であろう方々と藍沢先生が絶縁状態になっていること、宇月さんが意図的に名字を伏せていること。重戦闘区域にいる方々が余程のことがなければ成り立ちを気にしていない性格だからこそ今までなぁなぁで済まされてきた部分。

「すぅん……」

 なつさんの小さな声は、誰にも拾われずに消えていった。

ここまで読んでくださりありがとうございます!

面白かったらブクマや高評価お願いします。喜びます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ