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秩序の天秤  作者: 霧科かしわ
第七章 生きたくて、息をする
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第八話 夜更けの邂逅

「ねむ……」

「(ふわぁーあ)」

 頼まれた作業をしていたらすっかり夜になってしまった。何だかんだと俺の傍にいたスミレも大きなあくびをしている。……コイツ俺の作業中も寝てた気はするんだが、気のせいか?

 すっかり人気のない廊下を歩く。流石にこの時間帯だと声も聞こえない、俺の足音だけが微かに廊下に響いている。……その筈だったんだが。

「ゆん!」

「え」

「(え)」

 元気よく飛び出してきたゆき……おい嘘だろ、青藍さんが隔離してるって聞いたんだが。ちらりと周囲の気配を確認すると分かりやすくもう一人……うぱー、まさかお前の仕業か?俺とスミレは揃って顔を見合わせてから視線を合わせるためにしゃがみ込む。足元にいたイデアはみょーんと伸びて視線……もとい、高さを合わせていたが。

「良いのかここに居て……」

「ぴゃーん」

「(ふるふる)」

「駄目そうだな……」

とぼけた声を出すうぱーをつつく。極論うぱーがいるのはおかしくもないのだが、ゆきまで出て来てしまったとなると夏音が慌てかねない。今が夜である意味助かった。

「取り敢えず青藍さんのところに連れていくか……」

ひょい、と二人を抱え上げればスミレは肩によじ登る。一瞬止めようかと思ったが三人同時に抱えることは難しいので諦めた。その代わり転がっていたイデアも持ち上げてスミレに渡せば器用に落下防止紐として括っていたので大丈夫だろう。

「うぴぴぴ」

「ゆゆゆん」

「元気だな……」

 もう大分夜更けなんだが、眠くないんだろうか。四六時中寝てるようなスミレはもう既に眠すぎて俺の頭を枕にしようとし始めてるってのに。危ないからもうちょっと頑張れ。

 青藍さんのところに行こうと廊下を歩いていると、扉の向こうに気配を感じて立ち止まる。俺が立ち止まったことに気付いたうぱー達も何故か声を潜めたので、自然と扉の向こうに集中することになった。

「……」

遣霊がいるなら気配が複数あって然るべきだがそうではない。かといって油断すると見失いそうなものでもないので……大雅か遣霊を連れずに動いている宇月辺りだろうか。入江がレンを置いて単独行動するとも思えないので。ちらりと部屋の名前を確認すれば「備品室」の文字。

「……大人しくしてろよ」

「ぅ!」

「ゅ!」

「(こくこく)」

 出来るだけ静かにドアノブを捻る。少し薄暗い室内にいたのは……見慣れない、けれど初対面ではない姿。

「……鳥飼?」

「ひゃっ!?え、誰……?」

驚いたように振り返る鳥飼。手元にはチェックシートのようなもの……備品整理でもしていたんだろうか。知らない相手にうぱーとゆきは興味津々なのか少しだけ手足をばたつかせ、スミレは俺の頭に半分くらい突っ伏しながら鳥飼のことを見ている。

「俺は皇志葉。……どうした?」

「あ、鳥飼蒼空です……実は、薬を探してて」

「薬?」

「ぴ?」

「うん。これなんだけど……」

そういって手元に持っていた紙を見せて来る鳥飼。スミレ達も紙を覗き込んで来るから視界が騒がしい。……数種類の薬品が書いてあるが、生憎どれが何の薬かは分からない。

「何に使うんだ?」

「私が普段飲んでる薬の調合に使うんだ。宇月さんから許可はもらったんだけど……駄目だね、備品室のどこにあるかくらい聞いておけばよかった……」

「ゆーん」

「ぷぇー」

相槌を打つように声を漏らす二人。スミレはというとじっと紙を見ていたと思ったら少し頭を上げて周囲を見渡す気配。やがて、ぺしぺしと頭を叩いたかと思えばぶんぶんと一か所を指さした。

「こっちか?」

「(こくこく)」

「え?そこにある……本当だ!」

 スミレが両手で瓶を持ち上げ、そのまま鳥飼に渡される。安堵するように微笑んでお礼を言った鳥飼に対して満足そうに息をつくスミレ。

「ぷ?」

「ゆゆー……ゆん!」

「今度は何……あ、あれもか」

「え、わ……そんなところに……!?」

うぱーとゆきが何やら話し込んでるな、と思ったら別の薬品を見つけ出していた。確かに、あの棚の位置だと見つけるのは難しいかもしれない。お礼を言われたうぱー達はうぴゃうぴゃ、きゅいきゅいと謎の歓声を上げている。

「あとは?」

「ええと……あ、あとはこの薬――――」

「あ、鳥飼いた」

「宇月さん?」

 備品室を覗き込んだ宇月が、俺達もいたことで目を丸くする。ただうぱー達はそんなことしったこっちゃないという風に宇月が持っている薬品を指さした。

「ぷぁ!」

「きゅ!」

「あ、薬品……」

「え?ああ……うん。最近使ってたから返しそびれてて。はい」

「ありがとうございます!」

薬品を調合するから、と場を後にした鳥飼を見送ってから宇月が困惑したように俺に視線を向ける。……まぁそうだろう、なにせ両腕にうぱーとゆき、肩にはスミレを乗せてるのだから。

「多分抜け出したっぽいゆきとうぱーを送り届ける最中だった」

「ああ……いやどうやって抜け出した???」

「それは分からない」

「ぴゃーん」

とぼけた声を出すうぱーをつつく宇月。もうスミレが寝落ち寸前なのに気付いたんだろう、俺からゆきとうぱーを受け取り、青藍さんのところへ運んでくれると言ってくれた。

ここまで読んでくださりありがとうございます!

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