第六話 貴方の願い
「妹……」
「なぁん……」
血縁関係があったからといって、似た特性が現れるとは限らない。だから恐らく大雅達が警戒しているのはそういうことではなく……兄弟を殺されたという恨み、報復という部分だろうか。
「でも、復讐が目的なら寧ろ広報担当の方に行く……んじゃない?」
「どうでしょう……当時の職員がそのまま広報担当とは限りませんし、もっというと”ヒュリスティック”そのものに憎悪を抱いている可能性も――」
「なんな」
「ああそっか、その可能性はあるんだ」
勿論、大前提として本当に鳥飼が憎悪を抱いているかは分からない。だが事実として鳥飼の周囲には監視があって、それは重戦闘区域にとって善くないものだ。利用されているというのなら――――それはそれで対処が必要になる。
「どうやって監視されてるんだろう……服……とかじゃなさそうなんだけど」
「青藍さんに意見を仰いだほうが確実ですかね。あるいはシンさんか」
「なんなーん!」
「呼ばれた気がしたぁ~」
「シンさん!」
レンがぶんぶんと小さな手を振った、そう思った直後にシンさんがひょっこりと天井から現れる。すごいねレン、シンさんを呼び出せるんだ。
「どうしたの?」
「実は、鳥飼さんについているであろう監視についてなんですけど」
「監視?」
シンさんがきょとんとした表情を浮かべたことで俺と大雅は顔を見合わせる。てっきり重戦闘区域のことは全て把握してるものだと……そんな俺達の困惑に気が付いたんだろう、シンさんはくるりと地上に降り立ってから話を続ける。
「俺も一応来た時点で確認しに行ったけど、別に監視……まぁいっちゃえばこっちを見てる気配がなかったんだよね。だから二人が”監視されてる”って感じるのなら、それ多分指向性があるタイプの魔術とかだと思うよ」
「指向性が……」
「指向性を付けるメリットとは?」
「あー……ざっくりいうと容量削減かな。リアルタイムでみるにしろストックするにしろ、情報は絞った方が精度は上がる」
「あ、成程」
全てを等しく受け入れると先に術者の方がパンクする。世界視で散々体験したことだ。シンさんが監視されているという感覚を覚えなかった理由は恐らく姿を現していない、あるいは気配を消していたからだろうという考察まで出来る。
「……そうなると、何が目的なんでしょうね」
「俺も……正直監視されている感覚はなかったよ」
「んー……入江くんが感じなかったのが”新人だから”っていう可能性はちょっとあるなぁ」
「なんなな」
「それって……」
鳥飼の境遇に文脈が乗る。復讐という可能性が、何らかの目的があって潜入してきたという憶測が確信に変わりそうだ。
「もし本当に復讐が目的だとしたら……かなり厄介なことになるのでは?」
「うん。正直ここに居たって、情報すらないからね」
本人がどんな意図でここに配属されたのかは未だ分からないけど――――無駄足に終わるかもしれない、という点だけは、少しだけ思考の端に引っ掛かっていた。
ここまで読んでくださりありがとうございます!
面白かったらブクマや高評価お願いします。喜びます。