表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
秩序の天秤  作者: 霧科かしわ
第六章 静寂の水底へ
176/465

閑話その9 小さな体で大きな祝福を・中編

「なんななな」

「んー?」

「なんな!」

 こしょこしょと、まるで内緒話をするように声を潜めて遊んでるレンと春音くん。夏音くんとジュリアスくんの間にある妙な距離感とかはあんまり興味がないらしい……少し前なら多分警戒してたんだろうけど、今はこっちを信頼してくれてるってことなのかな。

「イしょ!」

「しょ!」

「まぁ流石に近くにいることすら危険な訳ではありませんし……ジュリアスさん、事前に報告はしますのでミツバさんも鍛錬に参加しても……?」

「……危険がないなら」

「やたー!」

「たー!」

「ぴゃー!」

ハイテンションな冬音くんとミツバくんにつられるようにうぱーはきゃっきゃとはしゃぎまわる。間違いなく理解はしてないんだろうけど、うぱーくんは誰かが喜んでたら自分も楽しくなるタイプなんだろう。ゆきくんもつられて喜んでるし、遣霊の性なのかもしれない。

「良かったね冬音」

「ン!」

「なうね、ねーね?」

「ちがぅ、にーさ」

「にーに!」

「はは、そうだね。ぼくは冬音の兄だよ」

「ににに!」

穏やかに応対する夏音くん。一瞬違和感が頭をよぎったけれど、追いかけっこを始めた冬音くんとミツバくんに意識が逸れた。転ばないようにと追いかけて行った大雅をなんとはなしに目だけで追いかける。残された兄達も少し後を追うように視線を向けていたが、やがてジュリアスくんが最初に口を開いた。

「……総一郎から、お前達兄弟の話は聞いている」

「……ええと、それって札木博士から、ってこと?」

「ああ」

 札木博士から聞いている、その言葉は特段悪い意味という訳じゃないんだろう。変人ではあるけれど悪人ではない。少し声音が硬いジュリアスくんにつられるように、夏音くんも少しだけ言葉を硬くする。

「……少なくともぼくは博士とあんまり接点がないからなんとも言えないのだけれど。……その表情を見るに、あんまりよくは思われてない、のかな」

「逆だ。……総一郎は、お前達兄弟のことを気に掛けていた。俺達に掛ける心配と同じくらい、ずっと」

「……」

「俺個人としては、お前達兄弟とは仲良くしたいと思っている」

ジュリアスくんの表情は変わらない。……もしかしてこの子、あんまり感情が表に出ないタイプなのかな。リアムさんがアランさん絡みだと比較的表情をころころ変えるから余計に表情が変わらないように見えてるのかも知れない。

「兄さん、ぼくもミツバも夏音さん達となかよくしたいからねっ」

「む、そうか」

「そうだよ」

 ちょっとだけ天然な反応をみせるジュリアスくん。夏音くんはというとジュリアスくんの言葉が予想外だったのか、困惑するように秋音くんの方に視線を向けていた。にっこりと微笑む秋音くんは夏音くんにフォローを入れることなく口を開く。

「私も仲良くなりたいので……ユディさん、ちょっとあっちで話しませんか?お兄さん同士つもる話もあるでしょうから」

「え?うん!」

「え、ちょっと秋音?」

「おいユディ」

「兄さん!ぼくらは慣れてるけど夏音さんは兄さんと初めて会うんだからねっ、ちゃんと言葉は口に出してよ!」

「え、はい」

「秋音くんいこっ!」

「うん。兄さんも、黙ってたら伝わらないよ?」

「えぇ……」

手を繋いで少し離れた位置に移動する二人。どうしようかと思っていたら、春音くんが俺の手を引いて少し離れたところまで引っ張ってきた。

「春音くん……あの二人大丈夫なの?」

「分かんない」

「なん!?」

「でも……多分俺達がいない方がまともに話すと思う、から」

そういうものなんだろうか。……ああでも。

 少し離れたところで固まっていた夏音くん達が、ぎこちないながらも口を開くのは確かに見えていた。

面白かったらブクマや高評価お願いします。喜びます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ