第二十九話 仮面の裏は?
「あれ、札木博士!?」
華蓮が素っ頓狂な声を上げる。事前に研究部門の職員だけど害はないと聞いていた。やや童顔気味の顔立ちも相まって一見すると研究部門で働いている職員だとは思えない。
「おお外羽か。久しぶりー」
「久し振りー……って、なんか性格変わってません?」
「いやお前と親しくしていたら式野の取り巻きに目をつけられるからな」
「あー……ああー…………」
「華蓮、この人は……」
「札木博士。以前言ってた……夏音達を作った博士のことをとっても敵視してる博士、のはず」
その言葉に一瞬身構える。例え敵視しているのが博士の方だとしても、警戒するのは至極当然の反応だった。
「何か警戒されてる気がする」
「そりゃあ……警戒するなって方が難しいんじゃないすかね」
「てっきり敵の敵は味方みたいな扱いされるかと」
「残念ですが敵の敵も敵です」
「全力で生きづらそう」
皇やアランさんが警戒している様子はない。一体俺が知らないところで何があったんだろう……警戒していないことについてとやかく言う気はないが、単純に気にはなる。
「……札木博士、もしかして研究部門の職員としては異端です?」
「異端とは失礼だな。比較対象がないから寧ろ俺が基準だぞ」
「まぁ少なくともこいつが基準だったら研究部門もっとマシだったよね」
「あ、シンさん……」
少し達観したような遠い目をしながら現れたシンさん。その腕にはやけに微振動する謎の……遣霊?違うな、多分直近で保護されたという子供がいた。
「じじじじじじじじ」
「ミツバ、お前そろそろ遣霊だと思われるぞ」
「いや本当にそう。ミツバくんじじしか言わなさ過ぎてもう語彙力が遣霊」
「スミレより喋りますね」
「スミレくんは喋らないじゃん?」
「うぱー……というよりは、ももと同じ気配がする」
「ワカルー」
シンさんから札木博士へ、自然な流れでミツバくんと呼ばれていた子が渡されればがっしりとしがみついている。札木博士が気にしている様子はない、落ちないように支えてはいるがミツバくんの好きにさせていた。
「凄く……懐いてる?」
「そうなの。ちょっとびっくりするくらい懐いてる」
「何故だろうなぁ」
「本人も自覚がないなら延々と謎だよ」
札木博士、食えない人かと思ったけど案外抜けてるのか……?いや敢えてそういう風に振舞っている可能性もない訳じゃない。だが、そういったものに一際敏感なはずのレン達が何も言っていないということは、本当に素で天然なのだろう。
「じじ、にには?」
「うん?ツルギのことか?」
「え、誰それ」
「ミツバ達の長男だ。厳正なるじゃんけんの結果何故か残留に決まった」
「どういうこと?」
「兄さんは総一郎だけだと心配だからといって研究部門に残りたがったんだ。それで、総一郎とじゃんけんをして勝った」
「そうい……ああ、札木博士のことね?」
シンさんの確認にコクコクと頷く子。……この子が例のリアムさんをベースにしたっていう子なのかな、喋り方とか表情がリアムさんに似てる。後ろからひょっこりと顔を覗かせた子は、あまり誰かの面影を纏っている感じはないのだけれど。
「別に心配されるようなことはしてないんだがな……」
「お父さん、すぐ仕事増やすから……」
「そんなことはあるけれども」
「自覚もあるんだ」
札木博士……子供達にすらある意味信用されていないの、一体今までどうやって研究部門で博士としてやってきたのか気になるレベルだな……。
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