第二十八話 同類は通じ合い、傍では困惑する
「じじじじじ」
「あっはっはセミかな」
「じじじじじじじ」
「セミダナ」
「いやもうちょっと否定しようよワカバくん」
確かにパッと見はセミなんだけど。何か鳴いてるししがみついてるし。みうくんはアランの隣でえー……?みたいな表情してるしスミレくんは我関せず。いつも通りだね。
「んー……一応聞きたいんだけどさぁ、お前、ミツバくんの何?」
「じじ!」
「まぁ言ってしまえば親だな。本人公認とは思ってもみなかったが」
「じじじ?」
「みゅ」
「そうですね。かなり懐いているように見えます」
アランと皇君はすぐに落ち着きを取り戻して今は観察中って感じ。困惑してるの俺だけかぁ……聞いてた話だと重戦闘区域に無断で入って来た我の強い職員ってイメージだったんだけど……。そもそも嫌がらせのためとはいえこっちにとってはメリットになるようなことしてくる相手、そう考えると辻褄が合わない訳じゃない。
「アラン的にはどうするべきだと思う?残り日数の処遇についてって意味だけど」
「雪代の判断を仰ぎたいんですが」
「おっけーじゃあゆっきー呼ぶね」
反応的にはそこまで悪感情はなさそうだな。皇君も平然としてるし。程なくして合流したゆっきーとラリマーも札木博士としがみつくミツバ君を見て少し目を丸くしたけど、過剰な警戒とかは見えなかった。
「元気だなーお前。朝ごはん食ったか?」
「ない!」
「食前の散歩で大冒険しすぎだろ。取り敢えず飯食おうぜ」
「じじじ」
「じじ?」
「じじじじー」
食事の準備するから、っていって俺を連れ出したゆっきー。皇君が手伝おうと腰を浮かせたのを制止して、二人だけで廊下に出る。
「なぁシンさん」
「なぁにゆっきー」
「重戦闘区域以外に俺達みたいな存在がいるとしてだぞ?……扱いってどうなるんだろうな」
「え待って待って今このタイミングで言ったってことは札木博士そういうことなの???」
「そうだよ」
えぇ……?ゆっきーの同存在ってことは俺達みたいな妖怪に目を付けられた、番として認められた存在ってことじゃん。そんなのが研究部門で博士やってるの……どう考えてもおかしい、よね?
「ていうか俺、全然気付かなかったんだけど……」
「大分巧妙に伏せられてる。多分あれ意図的に阻害してんな」
「何で……?」
「順当に考えれば――――重戦闘区域に送られるのを防ぐためじゃね?」
「何で???」
確かに以前は収容所って呼ばれてたから逃げようとするのは分かる。でも今はそんなことないし何なら割と俺とかルコンは他のところにも出没するじゃん。想定の十倍は自由だと思うんだけど?
「隠してるのが札木博士の方じゃなくて妖怪の方だからなー……探るんならその妖怪の方なんだよ本来は。あ、因みにあの札木博士だけどこっちに害を加える気配はない」
「いや……えぇ……?うん、そこは理解した……」
無害だって分かったのは良いけど、それ以外の部分が困惑しかないなぁ……これジャックに話しておいた方が良いのかな、それとももうジャックは把握済みなの??
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