第十九話 水面に残されたもの
「兄さんっ!」
勢いよく廊下を走ってるリアム。腕の中にいるうぱーは風を感じられて楽しそうだね……見てる方は吹っ飛びそうでちょっと怖いよ。リアムが皇君達の前で止まるとうぱーくんはぴょいんと地面に降りて踊り出す。楽しそうだね。
「今は眠っているだけです。ええと……一度医務室へ」
「ああ……私が連れていく。皇、東雲、助かった」
「みゅ……?」
「ぷ!」
「みみ。み」
リアムがアランを皇君から受け取ってる間に目が覚めたらしいみうくんが、ちょっとだけ目をこすってから地面に降りた。すかさずうぱーくんが手を繋げばふにゃふにゃの笑み浮かべて手を握り返す。微笑ましいね。
重戦闘区域に帰ってきて早々にリアムが突撃してアラン達は医務室に連れていかれた。やることのなくなった皇君と東雲君の目の前にひょいと姿を現す。……見た感じ怪我とかはなさそうで安心だね。スミレくんは東雲君の腕から抜け出してちゃっかり皇君の方に移動してる、ブレないね君。
「二人共おつかれー。見た感じ怪我とかはないけど、医務室に行く?それとも休む?」
「あ、シンさん。あの……研究部門にいた三人は……?」
「たん?」
「え、誰か研究部門から連れて帰ってきたんですか?」
「うん」
そういえば東雲君にはその話してなかったな。取り敢えずアランをどうにかするのが先ってことで確実に必要な情報だけ流した訳だし。こっちも状況が把握出来てなかったっていう部分もあるけど。
「どうもねぇ、研究部門の博士の一人が割と人道的……?まぁ少なくとも俺達に協力的みたいなんだよね」
おいで、と一声かけてから案内するように三人がいる部屋へと向かう。最初は医務室にいたんだけど、すぐアランも帰って来るって情報が来たから一旦別室に避難。何せあの子達のベースがベースだからなぁ。
「あれ、皇くんと東雲くんだ。てことはアランの方は解決した?」
「しゅ!」
ばっ、と手を広げたすももくんを追いかける様に更にちっちゃな手が伸びる。ももくんよりも小さい子には流石に威嚇も出来ないもんね、すももくんは転ばないように手を添えてわたわたしてる。
「ちったーい!」
「冬音さんよりも幼く見えますね……」
「うん。多分……ここにいる誰よりも幼いかも?」
「う?」
ソウに回収されたちっちゃい子はまんまるな目で皇君達を見てる。多分気になってるのかな、あうあう良く分からない喃語喋ってるよ。
「ちっちゃ……」
「(じー)」
「あー?」
「抱っこする?」
「え」
多分小さな子とあんまり関わる機会がなかったのであろう皇君が分かりやすく固まってる。東雲君はそっと指を伸ばしてがっしり掴まれてた。
「しゅん。しゅー?」
「小さい子苦手?」
「いえ……小さすぎて落としそうだな、と」
「大丈夫大丈夫!確かにほぼ赤ちゃんだけど流石に急に仰け反ったりはしないからさ!」
「う!」
元気よく手を上げてるね。恐る恐ると言った風に受け取った皇君の腕の中でももぞもぞと動き出したからこっそり支える様に手を伸ばす。あ、スミレくんも流石に危ないのか思ったのかイデアくんをクッションにして……違うなこれ、抱っこ紐代わりだ。
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