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秩序の天秤  作者: 霧科かしわ
第六章 静寂の水底へ
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第十七話 返す音すら知らぬまま

「……」

 自責の先に、何があるというのだろう。救いを捨てて、迷いに蓋をして、それで。……その先で待つものすら不幸だと言うのなら。

「──認めない」

全てが幸福であれなんて望めるべくもないけれど、不幸な顔して諦めるのは怠慢だ。俺がそれを認めてしまったら、この先へ進む理由すら。

「皇さんっ」

「……夏音?」

 勢いよく入ってきた夏音に意識を向けたその一瞬で我に帰る。……今は過去の発言に反応している暇はない、そう判断してそのまま思考を止めた。

「どうしたんだ?」

「実は……隣の部屋でノエルさんが謎の空間を見つけて……」

「分かった。こっちもある程度情報は取れてる」

「(こくこく)」

勾玉を回収して夏音と共にノエルさんのもとへ。式野なる人物の研究エリアに入ってから一切人と出会っていないのが寧ろ不気味だった。

「あ、皇くん!そっちはどうだった?」

「一応、アランさんのものであろう報告書の写しと、その現場の映像は入手しました」

「!じゃあ……」

「こっちは検査の映像があったんだぞ。……一応、これだけあれば情報は充分のような気がするけれど……」

「この先に、空間があるんですよね」

「うん。関係あるかは分からない」

 情報が集まったならば見つかる前に撤退すべきだろう。正直空間に関して気にならない訳ではないが、優先順位が違う。

「(じー)」

「……スミレ?」

「(ぽんぽん、ぐいっ)」

俺が判断を口に出す前にスミレが壁をこじ開けた。……いや絶対今の正規の方法じゃないだろ、どういう技術だ?

「あ、廊下……?」

「少し……暗いですね」

「いや、流石にてった」

扉の向こうに気配を感じ、思わず全員を抱えて空間に足を踏み入れた。すかさずスミレが壁を閉ざし、すんでのところで邂逅は免れる。

「……進むしかなさそうだ」

「そうみたいだな……」

 今いる場所から天井や別の道に逸れる方法はないため、警戒しながら先に進む。かつかつという自分達の足音だけがやけに反響していた。

「それにしても、よく分かったな皇くん……」

「?」

「俺も気配には敏感な方だけど、全然気付かなかったぞ?」

ノエルさんにそう言われて漸く気付く。……そういえばずっと、普段よりも聞こえる音の方向性が判別しづらい。いつもなら多分、隣室に入る前の足音で接近を気付けたはずだった。

「さっきまでの場所、ずっと音が……」

「音……?あ、確かにさっきまでの気持ち悪さがない……!」

どういう意図なんだろう、侵入者防止にしては、対処法がなさそうに感じたが。スミレがぺしぺしと腕を叩くので思考はそこで取りやめる。

 大して長くもない廊下の先にある扉の向こうに人の気配を感じるまで、あと。

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