表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
秩序の天秤  作者: 霧科かしわ
第六章 静寂の水底へ
158/462

第十六話 誰かの代替品で、一人の存在で

「んん……」

「んー……」

 映し出された映像を見て、揃って曖昧な声を漏らす。アランさん……の映像ではあるけれど、目的を達成するものではないというか。

「目の色が違う……から、これは管理人?」

「恐らくは……?でも、わざわざ管理人状態でサンプルを採る必要性……」

俺はその管理人状態なるものを詳しくは知らないけど、話によればほぼ無差別に周囲を制圧する狂乱状態、らしい。動揺恐怖歓喜警戒、全ての感情から発生する”揺らぎ”を察知して定められた静寂になるまで対処し続ける、そこに区別はない。

 無反応に検査を受けているアランさん。たまにどろりとした流動的な敵意が顔をもたげるけれど、アランさんが僅かに動く度に体に悪そうな注射が打ち込まれる。夏音くんが嫌そうな顔をしているのが殊更にあの内容物の不穏具合を補強している。

「一応これも参考にはなる……のか?」

「どうでしょう……皇さんの話だと、意識に干渉されているようですし……」

「そうなんだよな……俺の知る限り、精神干渉系の特性を使ったとして、そんな根幹から揺らがせるには相当時間が掛かる筈なんだけど……」

「……そこに関しては、式野博士のせいかもしれません。あの人は、異常な程他者に慕われていましたから」

夏音くんのやけに確信めいた言葉に思わず視線を向けた。情報不足と判断したのか夏音くんは無言で別室へと移動し、使用形跡を確認してまた別の部屋へと移る。

「夏音くんにとって、式野博士はどんな人なんだ?」

「……正直に言うと、優しくはありました。だけど、その言葉や行動の裏には…………いつだってアランさんがいた。僕や兄弟達を見ているようで、その実ただの実験体としか思ってなかったような。……そう思うことは、ただの嫉妬だと言われてしまいますけれど」

 優しいという認識と、酷い人だったという認識は共存する。特に夏音くんはクローンであるが故に苦悩もひとしおで、親同然の相手に嫌悪を向けるということすらきっと出来なかった。無垢な子供であることをきっと、研究部門の誰もが理解しなかった。

「いえ、僕の話はいいんです。さっきの映像から察するに……サンプルを採取されていたということは、どこかに記録が残っている筈……」

「実験記録?」

「はい」

記録、とはいったものの室内にそれらしき書類や機材はない。棚とか引き出しの中だろうか……そう思って周辺を歩き回る。なんとなく音が変な気がして少し気持ち悪かったけど、一か所だけやけに音が反響する場所があった。

「ん?」

「ノエルさん?」

「ここ……奥に空洞があるっぽいぞ?」

面白かったらブクマや高評価お願いします。喜びます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ