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秩序の天秤  作者: 霧科かしわ
第六章 静寂の水底へ
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第十四話 音を探して・前編

 夏音の案内で研究部門へと忍び込む。ノエルさんの特性である程度は見付かりづらくなっているとはいえ、そう悠長にはしていられない。

「こっちです」

軽い足取りでどんどん先に進んでいく夏音。置いて行かれる心配はしていないが、肩に乗っているノエルさんが落ちたりしないかは少し気にしている。スミレに関してはいつものようにイデアを紐代わりにしているので気にしていない。

「……人気がなくなって来たんだぞ」

「責任者である博士達は個別の研究室が与えられているので」

やはり大きい機材が多いからエリアとしても大きい方なんだろうか。青藍さん曰く「多少空間は弄っている」らしいが、そもそもヒュリスティックの全体像を見たことがないので何とも言えない。

 研究部門への侵入を悟られることなく目的地と思われる部屋へ。式野、と書かれたプレートがかけられた扉をくぐり研究室へと足を踏み入れる。一部屋だけではないのか、いくつか別の部屋に続くのであろう扉があった。

「……ここ、何か気持ち悪いんだぞ……」

「(ぎゅっ)」

ノエルさんとスミレが嫌がるように俺に身を寄せる。夏音は少しだけ眉を寄せたが、それ以上の反応は見せなかった。確かに少しだけ不思議な……何が原因かまでは分からないが、足元がふわふわするような感覚がある。

「ここから繋がるどこかの部屋で実験は行われてたと思いますが……」

「そうだな、二手に分かれよう。ノエルさん、夏音と一緒に行動してくれますか?」

「了解!二人共気を付けるんだぞ!」

「(こくこく)」

ノエルさんには夏音に移動してもらい、俺はスミレを抱えたまま端にあった扉を開ける。最初の部屋に比べるとこじんまりとした、だが整頓されていても尚多い書類の山に思わず目を瞬かせた。

 壁を埋め尽くさんばかりの棚と、いくつか置かれた机。その全てに分類されているのであろうファイルや未分類の書類がいくつもいくつも置かれている。筆記具やパソコンなどはない、正真正銘書類だけだ。紙の劣化を防ぐためなのかやや薄暗い室内はそこはかとなくおどろおどろしい。

「……報告書か?」

「(ぺらぺら)」

 何のものか分からない経過報告書に、びっしり文字の書かれた紙。この中にアランさんの資料が……あるだろうか、正直机にある分だけでも相当な量なんだが。

「(ぺちぺち)」

「スミレ、ちょっと大人しくしてろ」

「(べしべし)」

「いやだから……?」

しきりに俺を叩いて来るスミレに視線を向けると、数枚の紙を差し出してくる。もしやと思い内容を確認すればアランさんに対するものであろう報告書だった。……あの数秒で探し出したのかコイツ、凄いな。

「……第四談話室……?」

「(こくこく)」

 内容に関しては後々把握するとして、どこにアランさんがいたのかを確認しようと目を通す。……談話室ですら沢山あるのか、というか実験室じゃないのか。流石に書類を持っていくわけにはいかない……と思っていたら、スミレがイデアにせっせと紙をしまい込み、そして何故か吐き出させていた。……何してるんだコイツ。

「(べー)」

「……コピーも出来るのか」

「(ふんす)」

イデアから吐き出された紙と、イデアから取り出した瓜二つの紙。……もう何も言うまい、一枚はそのままイデアの中にしまい込んで、改めて俺はスミレを抱え上げた。

「スミレ、第四談話室に行くぞ」


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