第十話 境界に立って
情報だけが先行して届けられる。アランの意識が意図的に歪められて、急がないと危険な状態だ、と。タイムリミットを伸ばすために東雲君はそのまま残留、皇君はこっちに戻ってきて情報を探るらしい。
「不味いことになったねぇ……」
「本当にそう。なんせ研究部門だろ?リアムも駄目青藍も駄目……ワンチャン皇が単独潜入せざるを得ない説ある?」
「いやぁそうなったら俺が出るよ。俺は見られても別に問題ないしー」
「いやアンタがここ抜けたらこの二人どうするんだよ。大雅と入江にゃ荷が重すぎるだろ」
まぁね。純粋にリアムと青藍が暴れ出したらゆっきー達に負担がかかっちゃうなぁ。リスクさえ無視すれば事態解決に必要な人員だって理解してるから余計に。
「つか、情報が欲しいのは分かってるけどさ……どうやって潜入してどうやって回収するよ」
「そこなんだよね。それに関しては青藍も俺も苦手分野だし」
情報回収なんてジャックが一番得意だよ。取り敢えずノエル君には協力打診してみて……唯一自由に動けるであろう皇君も別に情報収集得意じゃないのが割と痛手だね。重戦闘区域に来る子、大抵搦手が苦手なのが一番の問題かな……。
「やっぱ時代は搦手だよゆっきー」
「デバフって正当な攻撃力がなけりゃただの嫌がらせじゃね?」
「もう大分過剰戦力だって」
「そこに関してはもう採用基準が駄目だよ。魔術部門が存在してんのに知識を共有しないの何らかのバグだろ」
上層部……というか実働部門の方向性として「単独で怪異と渡り合える」ことこそが至上、みたいなところがある。年中人手不足な部分があるから理解は出来るんだけどね……その結果軽戦闘区域がサポート寄りの子ばっかりになるんだとしたら、もうちょっとバランスってものを考えた方が良いと思うよ。
「よし決めた、この騒動が落ち着いたら軽戦闘区域辺りからサポート寄りの子スカウトして来る」
「シンさんそういうの得意だっけ?」
「人間と怪異の区別すらつかない奴だよコイツ」
「よーしシンさんそんときは俺と一緒に行こうなー」
お、意外。てっきり止められるかと思ったのにゆっきーもついて来てくれるみたい……実質デートだね?内容が内容じゃなかったら浮かれて踊り出しちゃうよ。
「取り敢えずいくつか情報収集に使えそうな術式は組んどいた。あとは隠密出来る人員纏めて……つっても多少は目星を付けとかないと厳しいか」
「そうだね。まぁアラン絡みってことはどうせあの博士だろうけど」
皇君が合流したらちゃんと話さないといけないな、俺達が知ってること、アランが抱えて、リアムに隠してること。
「てことで説明は俺がするから、ワカバくん達は青藍とリアム見ててね?」
「マカセロー」
「がんばるー」
流石にリアムと青藍もワカバ君達を押しのけるほど非情じゃないでしょう!多分!