第四話 傍観者としての詮索
描かれていたのはかつて重戦闘区域にいた、アランとリアムにとっては大切な、俺達にとっても大事な仲間だった二人。……二人が、遣霊を生み出すきっかけとなった事件の、被害者で加害者。
「……」
あぁお人好しが気にしてる。どうもお絵かきしてるのを見かけたらしいんだよね、そのとき興味を持って確認しとけば、とか思ってるんだろう。無意味だけど”たられば”に悪はない。
「傲慢~」
「煩いよ能天気」
能天気じゃないよ不可抗力だもん。大体、本人達が知るはずのない相手描くとは思わないよね、遣霊って記憶も覗けるのかなぁ。
「入江君の傍に描かれてた子、幼馴染みの子なんだってね。詳細は聞かなかったけど、レンくんは会ったことないってさ」
「……きっかけ、とみて良いのかな」
「どうだろ?どうせお前皇君に聞いてないだろうから俺が聞いておいたけど、あっちに関しては懐かしい気配はあるけど本人も誰か分かんないらしいし」
「また皇……」
「そうね。皇を名乗る放浪者が師匠って時点でまぁ……色々と特殊なのは確実だと思うよ。今もまだ連絡取れるかなぁ、一応確認してよ」
皇、と名乗る職員はいない。いたのはフリーの傭兵だけだ。イマドキ傭兵とか時代錯誤じゃない?って思ったけどそもそも初期からいたからねぇ、そのまま名乗ってるんだろう、知らないけど。
「……理由を知りたい。お前、見てなかったの?」
「俺がそんな細かいこと知る訳ないじゃん。お前だって全域把握なんてしないでしょ」
「使えねー……」
「はー???お前より有能ですけどー???」
今回に限っては俺の方が有能だもーん。ちゃんと情報収集までしてるからね。まぁ確かに全域把握に関しては出来るようになっとけって言われてたのは事実だけどさ。正直あんまり情報処理量増やすと精度落ちちゃうから難しいところ。監視とかそういうの俺達の得意分野じゃないし。
「てか、皇君は間違いなく異端だけど入江君も大概じゃない?一般枠なの?」
「一般枠だよ。本来ならアカデミーに入ってもおかしくない……実際、弟がいるみたいだけどそいつはアカデミーに通ってる」
「ふうん」
遣霊持ちだからアカデミーに通ってないっていう感じかな、入江君なら隠しきれそうな気配はあったけど、単純に二人分通わせるだけの余裕はなくて、弱い方をアカデミーに入れて生存の強化を図った可能性はある。
「あんだけずれてて一般人の枠に入れるのは一種の才能かな。リアムもアランも、結局人の群れには戻せないって満場一致したもんね」
「いや入江だってもう一回人の群れに戻すのは大分非人道的行為でしょ。あいつ、取り繕う必要がない瞬間を知ったんだからね」
「あれ、もうそこ取っ払ったんだ」
「重戦闘区域でそんなの必要ない」
相変わらず素体以外絶対許さないマンしてるなぁコイツ。別に良いじゃんそれも一つの側面だよ、と言いたいところだけど、正直あのレベルの取り繕いはちょっと俺だって嫌。自傷行為みたいなもんだからねあれ。
「……あや、どんな反応するかな」
「自分だけ部下いないの気にして部下とったりして」
「そんなこと…………するかな、するかも……」
すると思われてるんだ、言い出しっぺは俺だけど流石にしない……いやするかもしれないな、意外と負けず嫌いだから。
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