第四話 水中へ、手を引いて
「水中戦……有りではあるな」
「ぴゅお!」
「うぱーはどこから……!?」
藍沢先生の言葉に反応して顔を覗かせるうぱー。改めて自由すぎないか遣霊、こいつらにとって扉はあってないようなものなのか……?藍沢先生はうぱーに構わず言葉を続ける。
「オーシャンはアラン以外の協力を拒否してるし、それは研究部門も周知の事実だ」
「!じゃあ……」
「問題は、そんな都合よくオーシャンの手に負えない怪異が発生するか、という話だが」
「とうあー……」
「一旦要請だけしてみます?」
「あー……そうだな、やるだけやってみるか。こればっかりはアランが相手にどれだけ重要視されてるかによる」
協力要請をアランさん以外に行わないのなら、今後を考えて協力してくれる可能性もない訳ではない。藍沢先生が一度連絡のために席を外し、その椅子にうぱーがよじ登っているのをみながら他に出来ることはないかと思考を回す。
「……イデアを水中に放り込んで偽装してみるか?」
「いやそれイデアが危険なんじゃ……」
「まずイデアって泳げるの?」
最近プールに落ちていったイデアが数時間経ってから引き揚げられたが、普通に弱ったりすることなく平然と転がっていたので多分泳げる……かは分からないが、水中でも数時間活動出来ることは分かっている。サイズも変わるし分裂もするし、偽装にはもってこいの物質だとは思うのだが。
「というか皇とスミレは良いの?イデア囮にするのって」
「イデアだし……」
「(こくこく)」
「なぁす……」
正直イデアが危険に晒されるイメージが微塵もつかないから仮に討伐されても数か月後くらいにはひょっこり帰ってきそうな信頼さえある。そもそもコイツ、スミレが生み出したと思しき生物だが詳細は未だ不明のままだぞ。
「イデアさんを怪異に見立てるのはあくまでもオーシャンが非協力的だった場合、ですね。イデアさんに敵対意思はないためどこに出没しても測定不能の怪異として判断を仰がれるでしょうし……それだけでも充分アランさんを呼び出す理由にはなるので」
「詳しいな」
「これでも私、アカデミーでは主席でしたので」
「マジの天才じゃん」
「先行で入れるレベルだもんね……」
「たーてーちゅちょーい!」
「(ぐっじょぶ)」
いたずらっこのように微笑む東雲。俺や多分アランさんからしてみれば東雲は品行方正な優等生、といったイメージだったが、どうもそういう訳ではないらしい。少なくともイデアを怪異に見立てることに乗り気な辺り、さては自身の知的好奇心を満たすためなら周囲の影響を鑑みないタイプだな……?
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