第二十二話 改めて、よろしくね
「ええと、改めまして俺はノエル。見ての通り黒猫の幻獣種です……」
「ふふ、ノエルくんかぁ。可愛いね」
少し落ち着いたソウの膝上でノエルくんが恥ずかしそうに自己紹介をしてくれる。ソウは動物、特に猫が好きだからね……いや俺達もちょっと勢いが凄すぎて面食らってたけど。あとゆっきーに撫でられたのが嬉しすぎて止めるタイミングを失った感はあるけど。
「はー幻獣種なぁ……てことは出身は森か?」
「いえ、諸事情あって北です」
「え、北!?よく生き残れたね?」
「俺もそう思います」
幻獣種、他の種族に比べると幼年期が弱すぎるからね……。そんでもって種族としての総数が少ないから淘汰されがち、世知辛いよホント。
「ソウって見抜くタイプだっけ?」
「いやぁ……多分猫好き故の嗅覚とみたね」
猫好きって凄いね。俺もゆっきーも得意じゃないとはいえ一応そういうの見抜けはするんだけどなぁ。もっというと他のメンバーの中だと入江君とか……アランは知ってても言わなさそうだから除外するとして、他のメンバーも反応してない辺りソウの嗅覚が凄すぎる気はするね。
「それで、本題に入りたいんだが」
「あ、はい」
「ソウ、ほどほどにね?」
「はぁい」
流石にノエル君がお仕事中だってことは理解してる……よね?大分怪しいけどまぁ撫でてるだけだし大丈夫でしょう、多分。
「その後の進展は?」
「ええと……強いて言うならヒュリスティック本部の方から研究部門と呪具の制作に関しては調査の結果無関係だ、という報告を受けているという話だけですね」
「まぁこっちから出したモンだな」
「うん。狙い通りだね」
「それ以外は特に増えてはないですね……噂の出所についても少し探ってみましたけど、主に中央のアカデミー……それも生徒達から自然と、といった感じで詳しくは分かりませんでした」
「アカデミーかぁ……ゆっきーどう思う?」
「ま、生徒が発端の方が波及もしやすいからだろうな。しかも尾ひれがつきやすい」
「あーそうね。しかも彼等からしてみたら未来の就職先な訳だし……」
「呪具に関しては本当に出所が分からん代物だからな、噂されるのもしょうがない側面が強すぎる」
「そうなんですよね……」
ノエル君が調べても分かんない辺り割と打つ手なさそうだよね。情報元辿れば例の人物が分かるかなっていう期待は少しあったけど、流石にそんな簡単にはいかないか。随分と根回しが上手い……それこそジャックみたいに情報操作が上手いタイプなんだろうな。
「それで、今回は――」
「あ、はい。シンさんが言っていたように、酒見事務所の方から重戦闘区域専属を一人任命するために……今人員募集中です」
「おー」
「ノエルくん一緒にいれるの?」
「ええと……一応、その予定ですね」
「ふふ、嬉しいねぇ」
「そうだね、嬉しいね」
何か俺よりもソウの方が喜んでる気がするな。いや俺も嬉しいんだけど…………うん、やっぱソウの方が嬉しそう。
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