第二十一話 愛しい愛しい、愛しい子
「あ、ノエルくん久し振りー」
「久し振り……ですかね?こんにちはシンさん、雪代さん」
「ふふ、こんにちは」
「おーこんにちは」
シンさん、本当になんか機嫌良いな。普段も良く分からない理由で上機嫌なときはあるけど、あんまり人絡みってのは見ないから余計に。何でこんなにご機嫌なんだろ、シンさんの中でノエルは割と好感情を抱きやすい相手ってことかな。
「そっちの情報収集は一旦落ち着いたのか?」
「あ、はい。ええと……あれっ、シンさん言ってないんですか?」
「んー?スペースの話はしたけど、そこから進展があったり他の噂があったりしたら困るからさ」
「あぁそういう……」
「立ち話もなんだし談話室行こうぜ。多分ソウもいる」
「ソウさん?」
そういやノエルは前回ソウに会ってないのか。本人勝手にどっか行ったりすることもなかったからな……そういう律義さは割と俺も好き。
「わー!ねこちゃん!」
「わっ!?」
談話室に入って早々に飛びついてきたソウにノエルが困惑した声を出す。思ったより俊敏な動きに俺もシンさんも目を丸くしてた。取り敢えず室内に入ってから改めて座って、ソウには悪いけど一旦引き剥がさせてもらう。
「ソウ、流石に相手が困るだろ」
「ねこちゃん、ねこちゃー」
「駄目だこれ……大雅呼ぶか」
「いやぁこの状態のソウは大雅くんでも無理なんじゃないかな……」
まぁ確かに。俺達が話してる最終でもぱたぱたと腕を振ってノエルに飛びつこうとしてるし。もしかしなくてもソウにはノエルが猫に見えてる感じか?
「悪いなノエル」
「あ、いえ……」
流石に初対面の相手に猫扱いされたら困惑どころか怒られてもおかしくはないな……そう思っての謝罪だったんだが、ノエルの方はちょっと戸惑いを見せてから沈黙、やがておずおずとソウに顔を寄せた。
「ふふ、ねこちゃん」
「……」
「可愛いねぇ、真っ黒なねこちゃんだぁ」
「…………(ゴロゴロ)」
「えっ」
「えっ?」
ふわふわとソウに撫でまわされているノエルが喉を鳴らしたのに気付いて、俺とシンさんは本日二度目の困惑。困惑ついでに拘束が緩んでソウがノエルの方に身体を寄せた。恥ずかしそうにしながらもされるがままのノエル。
「……どういうこと?」
「いやぁ俺も良く分かんない……」
「ふふ、ねこちゃん可愛いね」
いやもうあれはほぼ本物の猫じゃん……?二人の間に入ることも、言葉をかけるのも憚られて二人でなんとなく固まっていれば……ふと、ノエルの頭に違和感。
「あ、猫耳」
「あれもしかしてノエルくん、亜人か幻獣の類……?」
俺達の言葉の最中にもどんどんノエルの姿は変化していって、最終的に正真正銘の黒猫になってソウの膝に乗っかった。えぇ……?ソウは最初からノエルがこの姿で見えてたってことなんだろうか。
「んみぃ……」
「毛並み綺麗だね。まだ子猫?」
「幻獣の成人って何歳?」
「ええと……このタイプだと確か百とか二百くらいじゃないっけ。ノエルくんって今何歳なの?」
「今年で大体二十歳です……」
「じゃあ赤ちゃんだよ」
あぁソウの超絶撫でテクにノエルが翻弄されてら……こうなったらソウが満足するまでは会話出来ないな。……暇だから俺もシンさん撫でとくか。
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