第十九話 布石を打つ
「んー……」
「んー?」
「おや難しい顔してるね、どうしたの?」
「あれ、シンさん!?」
「かえ!」
あっはドッキリ大成功~!目をまんまるにして驚くノエル君と小さな指突き付けてきた遣霊君。話には聞いてたけどこの子がちあきくんかな、元気だねぇ。
「どうやってここに!?」
「いやぁ俺ってばどこにでもいるからさ」
「かえ!」
おっと信用なさそう。ちあきくんは知らない人に対して警戒心が強いんだかそれともうぱーくんみたいに好奇心が旺盛なだけなのか、ぺしぺしと俺のマフラーと戦ってる。一応それ、俺の武器だから危ないものなんだけどね?まぁこんなところで戦う気もないけどさ。
「それで、どうしたの?」
「あ、ええと…………実は、頼まれていた情報の話なんですけど……」
「あぁ青藍が何か言ってたね。確か……『研究部門から情報が漏洩して呪具が作られた』だっけ?」
「それもありますね」
「え、それ以外もあるの?」
「はい」
「かん!」
ちあきくん元気だね。元気なのは良いんだけど勝手にポケット漁るのは勘弁してほしいかな……うぱーくん用のキャラメルをぽいと口に放り込む。あぁちょっと驚いたみたいだけど大人しくなった。
「支部の……”スペース”の方で、未知の鉱石が見つかった、と」
「未知の鉱石……?」
何それ知らないんだけど。仮にそんなの流しても研究部門の目を逸らせるほどの価値……あ。
「それってもしかして、あの結晶……?」
「噂を聞く限り……それっぽいな、とは思いましたね」
「えぇ……?とんだとばっちりじゃん」
確かに例の結晶は何故か研究部門にとっては外羽君に匹敵するほど希少なものであるらしいってことは理解しているけど、そんなのが発見されたって誤報を流されたスペースにとっちゃいい迷惑じゃないかな。特にあの支部よく訳の分からないものが発見されるし。一番可能性ありそうだから誤報かどうか微妙なラインなのもそう。
「まぁ支部には近々アランが行く予定だから確認してもらうかなぁ……。案外本当にスペースで発見されたものかもしれないからね」
「その場合何故それが研究部門の目を逸らすために使われたのか気になりますけどね……」
「あはは、それはそう」
「ん!」
あの結晶を使った相手、研究部門があの結晶に価値を見出すことを知っていた、っていう事実以上に本人は多分結晶を生成ないし取り扱う術を知っているってのが一番ヤバい部分じゃないのかな、って思うよね。だってあれ、触っただけで気絶するような物質だよ?詳しいことは知らないけど布越しとかでも駄目らしいからよくあんな場所に設置出来たなって思ってる。
「……あの、シンさん」
「んー?」
「綾華……どうですか?」
「元気だよ?外羽くんと一緒に過ごしてるし、最近だと保護された子のひとりと一緒に鍛錬してる」
「そっか……よかったぁ……!」
……やっぱノエル君、やけに入江君に対して甘いというか、気に掛けている気がするな。これならいけるかな。
「ねぇノエルくん。酒見事務所ってさぁ……重戦闘区域専門の人員置く予定とか、なぁい?」
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