第十八話 情報と真相
別にイレギュラーが起こってたって怪異の発生が止まるわけでもなし、普通に関係ないところでは相も変わらず問題が起きてるし、怪異も普通に蔓延ってる。理性がないってのはメリットでありデメリットだね。
「あぁ、いい加減支部の方も行かないとな……」
「東雲もついてきたがってたじゃん、どうするの」
「どうするも何も……どちらにせよ話は通すんだ、その際に意向を聞くさ」
色々抱え込んではいるけどアランのやることは変わらない、変わらないというか、業務は増えるけど減らない。特にこんだけイレギュラーが頻発してると、書類も実務も見回りも、乗算的に増えてしまう。
「み、みー」
「え、あぁ……そういえば呼び出しもそろそろか……前回纏めてやっておけば良かった」
「良くない。いや回数が少ない方がいいのはそうなんだけど、呼び出し自体がよくない」
「しょうがないだろ」
アランが言ってる呼び出しってのは研究部門からのもので、重戦闘区域の平穏を保つための取引の一つでもある。正直俺達からしてみれば大分不公平な取引だったから文句の一つでも言いたいところなんだけど、その取引をせざるを得ない状況になった事件の当事者たちが重戦闘区域の職員だったことも相まって微妙に何も言えない。いつか絶対是正する。
みうも不満そうにアランのことを見てるけど、普段は割とみうに対して甘めの反応を見せるアランだって流石に呼び出しを蹴ったりはしない。分かるよ、だってアランが出なかったらリアムにまで影響が出る可能性は高いもん……一歩間違ったらワカバやゆっきーだって被害に遭う可能性はある。……それを理解してたって、不満を無くすことは出来ないんだ。
「ところで青藍、ノエルさんに頼んでいた情報関連についてなんだが」
「まだ特に報告は来てないけど……何かあったの?」
「まぁあった、と言えばあったな。少し前に呪具の報告があっただろう?あの出所が、研究部門からだという噂が急速に広まっている」
「えぇ……??」
確かに少し前から一般区画で呪具が広まっていたのは知っているけど、以前調べたときは紛い物だしヒュリスティックとは関係がないという判断になっていたはずだ。いや確かにヒュリスティックが完全に無関係だっていうのは随分と珍しいなと思わなかった訳じゃないけど、実は関わっていたっていうオチ?
「どういうこと?」
「正確には”外部に研究部門の技術が漏れていた”というのが正解らしいな。内通者と情報漏洩、研究部門が認めるのは果たしてどちらになるのか、という話だが」
「……それ調査するの?」
「いや、火消しを対価に黙らせる。あちらとしても今調査されると不都合が多いんだろう、快く承諾してくれたよ」
呪具を作っていたのが研究部門でも、技術だけが漏れていた場合でも、今詮索されると研究部門としては非常に困るだろう。なんせあの結晶の騒動で人が減ってるからね、隠蔽にまで手が回らない訳だ。
「一般区画の方でどういう情報が回っているのかを確認した後……タイミングを見計らって無関係だった、という説明をしないとな」
「み?」
「いや、別に本気で火消しをする必要はないかなと。躍起になって否定しようとするようが余程真実っぽいし」
「あぁー……」
一応そういうの、考えてるんだ……。
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