表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
秩序の天秤  作者: 霧科かしわ
第五章 巡る四季に想いを馳せて
133/466

第十七話 疑念に導を

『……かつて、この重戦闘区域にいた職員、です』

 アランさんの言葉がぐるぐると思考を回す。歴代職員、ただそれだけならばそこまでリアムさんが制止しようとした意味が分からない。恐らくもっと────それこそ、本人達の人生に影響するような。

「……スミレ、痛いんだが」

「……(べしべしべしべし)」

 無言でただひたすら主張し続けるスミレ。何を抗議しているのかさっぱり分からないのだが、どうやら何か不満があるらしい。

「お二人共仲良しですね」

「これ仲良しか……?」

「たたとちー!」

「(ふんす)」

意図はさっぱり分からなかったがどうやら東雲に誉められたことで少し満足したらしい。叩くことをやめたと思ったらイデアをひたすら捏ね始めた。遣霊の中で捏ねることが流行ってるんだろうか。

「イデアくん、ごきげんだね」

「イデアがご機嫌……?」

 まさかイデアの感情が分かるのか。秋音はにこにことイデアを捏ね続けるスミレを見ているが、多分スミレもイデアの機嫌は分からないと思うぞ。

「……何か、考え事ですか?」

「え。……いや、そうだな」

東雲の笑みに促されるように思考をそのまま口に出す。俺自身もこれが悩みなのか、それともただ思考に引っ掛かっているのか。引っ掛かっているのだとしたら何に引っ掛かっているのかが分からなかった。

「アランさんとリアムさんと話したときに。……春音のベースが、かつてこの重戦闘区域にいた職員だって聞いた」

そこまで話したタイミングで秋音にこれを伝えるのは良いものかと思い至り、口が止まる。俺の逡巡に気付いたんだろう、秋音はふわ、とこちらに笑みを浮かべて大丈夫だというように頷いた。

「……ええと」

「かつていた職員、という部分に引っ掛かっている?」

「……そう、かもしれない。重戦闘区域に人が入るのは……殆どない、って聞いたから」

「実際、私達が所属するまでは職員が三人でしたものね」

「つーたいてー?」

「ええ、とても少なかった」

実際、アランさんに部下がいることで驚かれたこともあるのだ、重戦闘区域の性質上仕方のないことなのかもしれないが、恐らく本当に入って来る人材というのは少ない。

「アランさんはどうも……あんまり部下を取りたがってなかった。俺と入江が入ったときも、部下になったのはシンさんと青藍さんからの推薦だったみたいだし」

「シンさんと青藍さんが部下として推薦した、ということは……秋音さんのオリジナルであるお方は、恐らく部下じゃないですよね」

「あぁ、多分そうなるのか」

「……」

少なくとも青藍さん達は部下を取らせることを嫌がっている訳じゃないのだ。寧ろ俺も入江も”部下にした方がいい”という発言まで貰っている。……そして何より、目の前にいる東雲はアランさんが自らの意思で部下にと望んだ存在、もし例の職員が部下であり、力不足で失うことになっていたのだとしたらそんな選択はしないだろう。

「じゃあ……上司……?」

「その可能性は高いかと」

 リアムさんが咎めるように言葉を制止しようとした理由、アランさんがそれ以上の言葉を紡がなかった理由、そして何より、意図的に伏せられているであろう重戦闘区域の過去。

「アランさん達は一体……いや、この重戦闘区域で、一体何が起こったんだ……?」

 謎は、まだ解けない。

面白かったらブクマや高評価お願いします。喜びます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ