第十六話 道行きを閉ざしはしない
「ゆーん!」
「ぴゅー!」
「ショぎょムじょウ……」
「どこでそんな単語覚えるんです?」
身体の柔らかさに打ちひしがれている冬音さんを持ち上げてから次の動作に移る。うぱーさんとゆきさんは楽しそうに柔軟をやっているので今はそっとしておこう。流石遣霊というべきか、単純にうぱーさん達の身体が柔らかいだけなのかは生憎判別がつかない。冬音さんも充分柔らかいんですけどね、こればっかりは比較対象が悪かった。
「冬音さんは、どうして強くなりたいんですか?」
「……まダ、あちにイル」
「未だ……あっちに、いる?」
「ソウ」
こくん、と小さな頭が揺れるのを確認して思考を回す。元々、研究部門にはまだクローンと思しき子供達がいることは外羽さんの発言からも、謎の情報提供者からも分かっていた。しかしまさか冬音さんがその子供達と知り合いであったとは。……いや、確かにわざわざ分ける方が非合理だとは理解しているのだけれど、それでも確かに、ノエルさんが助けに行った場所には夏音さんの兄弟である三人しかいなかったのだ。
「失礼ですが、まだ残っているお方、というのは……?」
「ちちゃい」
「ぴょ?」
「きゅー?」
小さい、という単語に反応してわらわらと集まって来るうぱーさん達。確かに彼等もまた小さい……冬音さんも小さいのだが、その辺りに口を挟むのは野暮になってしまうだろうか。
「コレ、くらぃ」
「その大きさは最早レンさんでは」
本当に手のひらサイズか?まだ人の姿を取れていない……?確かに安定していないと言われてはいたけれど、まさか人の姿ですらないとは。
「ばぅ」
「ぴょう!」
「ゆーん!」
「こェ!くぁい」
あぁ、自分で気付いて訂正したのか。……どうも冬音さんよりも幼いようだな、冬音さん自体が遣霊達と比べても小さい方なので、それよりもさらに小さいとなると相当幼いことになる。
「ええと……冬音さんはそのお方と仲が良いんですか?」
「??ワぁンな」
「ぴゃい」
「きゅい」
「え、分からないというのは……?」
「あぇ、ジャマ」
「ガラス……」
ガラスが邪魔、仲が良いかは分からない、そして救出時の様子。……まだ眠っているのか、それとも安定せず出してもらえないだけなのか。だが少なくともガラス越しでしか交流出来ていないのなら別室だったことにも理由がつく。
「……成程、冬音さんはそのお方を大切に思っているんですね」
「コこ、へーわ。いタイ、なぃ」
「はい」
「だあラ、つえう、くぅ」
「ぴゅう!」
「きゅう!」
沢山喋って疲れたのか、少し息を吐いてから大の字になる冬音さん。真似するようにころころと転がりだしたうぱーさん達が互いにぶつからないように気を付けながら、私はそっと笑みを向けた。
「そうですね。冬音さんの大切なお方を連れ出せるように……私も微力ながらお手伝いさせてください」
「ン!!」
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