第十五話 一番近くにいる相棒
「……私は、夏音だけを呼んだつもりだったんだが」
「ごめんなさい……」
「うぴゃ!」
「ゆん!」
うぱーがついてきている時点で今更か……。ふんふんといやにやる気に満ち溢れている冬音とゆきをどうしようかと少し沈黙。本人達も遊びでついてきている訳ではないのだろうけど、一旦私としては夏音の技量が見たい。
「大雅、三人を頼む」
「分かりました」
「ヤ!」
「冬音、お前が強くなりたいのは分かるがそもそも私はあまり教えることが得意ではない。だから今日は夏音だけに集中させてくれ」
「……ゃ」
理解はしたが納得は出来ないといったところか。少し勢いがなくなったのは無理を言っている自覚があるからだろう……そんな冬音の反応を見ていた大雅が視線を合わせて提案をする。
「私で良ければ、戦い方を教えられますよ?」
「ほんト?」
「はい。とはいえ、まずは体を鍛えないといけませんね。あちらで一緒に走り込みとストレッチをしませんか?」
「すぅ!」
「ぴー!」
「ゆん!」
「ふふ、みなさんやる気満々でなによりです。……ではリアムさん、そういうことで」
「ああ。助かった」
大雅の機転で当初の予定通り二人きりになったわけだが……改めて見ても面影はないな。データの総量を見るならば青藍さんをベースにしている冬音の方が余程少ないだろうに……と、そこまで考えてから思い出した。そう言えば兄さんが今の姿になる前は、確かにこんな見た目だったかもしれない。
「あの……?」
「ああ、すまないな。……一先ず適当に打ち合うか、こちらとしては今の実力が見たい」
「分かりました」
頷いてから夏音が持ち出したのは長い黒剣。……得意ではないはずの武器で戦うのか、それでも一定の技量があるならばまだしも、あまり強いとは言い難いという発言も受けているんだぞ。
「……その武器で良いのか?」
「はい、これしか僕は持っていないので」
成程、ただ似せるためだけに持たされた武器……適性も相性も無視した、いっそ自己満足と糾弾してしまえるような。せめて最低限の適性くらい調べておけ、同じ場所で育ったところで同じ性質になるとは限らないんだぞ。
軽く打ち合って戦闘スタイルを把握する。……想像よりはそれほど酷い訳ではない、が、アランと比較した場合は……成程、弱いとしか言いようがないだろう。
「……ふむ」
「どう……ですか?」
「確かに、重戦闘区域の基準で言えば弱いな。特に純粋な戦闘技能だけで戦おうとするなら余計に」
「……」
「管理人があるからかもしれないが……お前、自らの特性のことを忌避しているだろう」
「……そう、ですね」
普段から特性を使っていると管理人も学習し使おうとする傾向にある、とアランは言っていた。故に特性を使うときは最小限、最終手段としての使用を余儀なくされている。勿論ただ管理人のためだけに制限をしている訳ではないらしいが……その辺りの説明をする必要はないだろう。
「使う使わないは個人の勝手だが、特性を嫌悪することだけはやめておけ。あくまでも特性は本人の弱点を補う相棒だ、好きとまでは言わずとも、利用出来るのなら利用した方がいいだろう」
「弱点を……?」
「ああ」
私の言葉に思うことがあったのだろう、少し沈黙を返した夏音は、ややあってから特性の制御方法についても教えてほしいと口に出した。
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