第十四話 同一と、不一致
「あぁ、結局リアムが教えることになったのか」
「やや不本意だがな」
「俺よりは上手いだろ」
「違いない」
いやにはっきりとした断言に自覚があるのかとちょっと考える。まぁあるのかないのかで言われたら流石にあるだろう……多分。俺だって教えるのは得意じゃないからリアムさんの上手さを知らなくても同じ反応になる。
「先に聞いておきたいんだが、お前から見てもやはり合っていないのか?」
「得意武器が違う」
「合っていないな」
即答か。アランさんのバトルスタイルは武器に依存……いやこの人確か素手でも戦っていた気がするな。あの時は藍沢先生に武器を使えと怒られていたっけ。
「軍の……ああいや、今はスタンダード式戦闘術か?あの戦い方が出来ることが前提ではあるが……」
「そこに関しては俺に寄せていたようだから何とも言えないな」
「み」
「え、……あぁ成程、独学だった故に寧ろ戦闘術の方が得意なのか」
「参考にしたってことですか?」
「恐らくは」
実戦で覚えるときは戦っている相手の動きから盗む、誰かに教わるときは説明された動きをなぞる。そのどちらでもない場合、文献から動きを把握し、再現するくらいしか方法がない。自ら考え独自の戦闘スタイルを確立するとしても、そのためには膨大な知識と経験が必要である。
「寄せていたのは……指示、ですかね」
「……まぁそうでしょうね。あれだけの実績を残せるだけの研究職員となると、そう数は多くありませんし」
研究部門サイドで、夏音達の存在がどう思われていたのかは定かではない。けれどアランさんの発言から察するに一種の偉業として見られていた可能性が高いんだろう。
「あの、夏音はアランさんで冬音が青藍さんをベースにしているのは理解しているんですけど……秋音が東雲の気配に近いのは、何でですか?」
「…………そうですね、そこに関してはまだ確証がとれていません」
確証。つまり……少なくとも東雲だけがベースにされた訳ではない、ということか?アランさんは何かを知っているような気がするが、本人が開示するつもりがないのは気配で分かる。意外なことにリアムさんもまた知らされていないようで、少しだけ問いただす様に視線を向けていた。
「ただ分かっている点として、彼らのベースにされたのは全員が職員である、ということです」
「え、じゃあ春音も……」
何らかの功績や実績を残した職員、とみていいだろうか。それにしても春音だけが誰の面影を纏っていないのは少し不自然に思える、特に、他の三人が重戦闘区域にいる人達の面影を纏っているから猶更。
「はい」
「兄さん」
「いずれ知れることだ。それなら、俺は自分の口から言いたい」
咎めるようにリアムさんの声が飛ぶ。スミレが瞼を上げて、みうが静かにアランさんを見つめている。アランさんの表情は心なしか硬い、言葉を発するために吸い込んだ息すら、冷たい鋭さを纏っていた。
「……かつて、この重戦闘区域にいた職員、です」
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