第十三話 図らずとも結論は揃い
「っ……あー……」
「鈍っているな」
「そうっすね。流石にブランクが強すぎるかぁ……」
少し体を動かしたいと頼まれて、そのまま流れで手合わせをした。外羽は基礎的な部分も応用的な動きも人並み以上に出来ている、しかし時折想定した動きを行えていないような間があるのがとても惜しい。恐らくこれは監禁されていた弊害だろう、十年近いブランクありきにも関わらず中戦闘区域の職員程度の実力があるのなら充分強い部類に入る。
「意外と戦えるんだな」
「まぁ……もう多分バレてるから言っちゃいますけど、天使ってだけで色々と厄介なんですよ」
「そうだろうな」
「はい。隠しててもどっかからか情報が流れてるっぽくて……」
どれだけ隠しても情報というものはどこからか暴かれる。特に天使ともなれば種族蒐集家からも天使専門のコレクターからも狙われるだろう、自衛のために強くなるのも当然である。
「すみませんリアムさ……あれ、華蓮?」
「あ、綾華……に春音!?」
「あれ、華蓮さん……?」
「なんな?」
声を掛けてから入室してきた入江の後ろから、次男である春音も出てきたことで全員が困惑の表情を浮かべる。正直双方にとって予想外だ、入江の声音から緊急ではないと判断して一先ず移動を提案した。
「成程、戦闘訓練」
「はい。アランさんの戦い方とは……どうも違うみたいなので」
「まぁそうだろうな」
いくらクローンとはいえ、あの戦い方を模倣出来たら誇っていい。模倣することに特化しているソウが「やりづらい」と言うレベルなんだぞ、渡り合うことは出来ても再現することなんてとてもとても。
「とはいえ、だ。私もそこまで教えることに長けている訳ではないぞ」
「そうなんですか?」
「ああ。流石にアラン程苦手という訳ではないが、あまり期待はするなよ」
戦い方が全く違う相手だった場合教えられることはそう多くはない。そうでなくとも、他人に戦い方を教えたことなどないのでどこまで上手く出来るだろうか。
「まぁ、なんにせよ一度見てみないことには始まらないな。夏音が空いているタイミングを教えてくれ」
「っ本当!?」
「強くなることに異論はないからな」
まだ詳細を聞いたわけではないが、アランが少々無理をして遣霊を出現させたとも聞いている。つまり遣霊を出現させてしまえるほど追い詰められていたんだろう、強くなることでその憂いが少しでも払われるなら安いものである。
「お前はどうする」
「……え、俺?」
「ああ。流石に同じ訓練とはいかないが……いや寧ろそうだな、入江に教わるのも手だぞ」
「えっ」
「なん!?」
どうせ最初は体力づくりからだろう、そう思っての発言だったが入江にもレンにもやけに驚かれてしまった。……そんなに驚くような提案だろうか。
「外羽も肩慣らしをするなら入江のサポートに回ればいいんじゃないのか」
「まぁ……それもそうっすね。綾華、春音、一緒に頑張ろうな!」
「待って華蓮って戦えるの!?」
そこからか。
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