第十一話 所謂同類
「……」
気が付いたら医務室だった。相変わらず腹の上で寝ているスミレをついついと指先で触れる、むぐむぐと口は動いたがまだ起きないらしい。
「何だ皇、気付いたのか」
「藍沢先生」
藍沢先生がいるということは重戦闘区域の医務室ではない……違うな、そういえば保護された人達の治療をするために今藍沢先生は重戦闘区域に入り浸ってるんだった。
「話は聞いてる。調子はどうだ?」
「悪くないです。特性を起動したとは思えないくらい」
「そうか。流石にあの馬鹿も気にはしたっていうことだな」
「(むにゃむにゃ)」
夏音との戦闘中に声……多分アランさんが来て、強制的に特性を起動させたのだろうとは思う。感覚的に夏音には言葉が届いていないような気がしてはいたが、流石に荒療治が過ぎないだろうか。アランさんがいたのだから怪我くらいで済んでいると思うけど。
「おはようございます。志葉さん」
「アランさん。おはようございます」
「すみません、差し出がましいとは重々承知していたのですが、丁度良いタイミングだったので利用させてもらいました」
「みゅ」
図ったようなタイミングでアランさんとみうが入室してきて、そのまま謝罪と事の顛末を語られる。俺によって死にかけた夏音は無事というかなんというか、最後の均衡を超えて遣霊を産み出した。ゆきと名付けられた遣霊は固有の能力として”事象の凍結”を行うことが可能であり、それによって夏音が危惧していた弟達を傷付ける指示への対抗策が出来た、らしい。
「利用されること自体は良いんですけど……夏音の問題の、根本的な解決にはならないのでは?」
「まぁそうですね。本人は無自覚なんでしょうけど、本当は自身の実力不足に対して気後れしている部分が強いでしょうから」
多少戦闘経験があっても、誰かに手ほどきを受けた感じではなかった。生来のバトルセンスがずば抜けているという訳でもなさそうなので、現状の実力としては低い方である。
「経験則……とまではいきませんけど、恐らくただ守られることをよしとする性格ではなさそうなので……誰か、戦い方を教えられる人がいればいいんですけど」
「アランさんは?」
「俺は駄目です。知り合い曰く感覚派なので」
単純に求める技量が高すぎるだけでは、という突っ込みは黙っておいた。重戦闘区域にいる人達は大なり小なり尖った性能の人が多いので、上手い具合に長所が噛み合えば教えることも出来ると思うが、そもそも夏音の得意な戦い方、というのを本人は理解しているんだろうか。
「一度アランさんと戦わせないと気付きませんかね」
「どうでしょう……俺が出ると精神の方に異常をきたす可能性がありますけど」
「いざとなったら俺が出ます」
「成程」
まず夏音の「アラン・アンシエントのクローン」であるという認識を変える必要がある、そう思っての会話だったのだが、ずっと静観していた藍沢先生が呆れたように息を吐いた。
「お前ら、効率を求めることに意見はないが巻き込む奴らにはちゃんと説明してやれ」
「?」
「?」
「おいみうとスミレ、お前らの主人だろどうにかしろ」
「みー」
「(すやすや)」
みうはともかくスミレはただ寝てるだけです藍沢先生。というかコイツ、何らかの案があっても口に出さないのは前例があるから困る。
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