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秩序の天秤  作者: 霧科かしわ
第五章 巡る四季に想いを馳せて
120/465

第四話 四季はかく祈りき

「……」

「…………」

「……?」

 見覚えがあるな、この顔。青藍さんと渡り合ってた、何故だかアランさんの様子を伺いたくなった相手だ。後ろにいる三人の方は……青藍さんに似た一際小さい子供に、何故か東雲の気配に近い子供と、硬い表情を浮かべる見知らぬ子供。

「……」

 さっさと自己紹介をしろと言わんばかりにスミレが俺をべしべしと叩いて来たので大人しく口を開く。互いに名を名乗り、隣にいた東雲も名を名乗れば満足したのかスミレは大人しくなった。

「……あの、魔術部門の職員……と、医療部門の職員……じゃ、なかったんですか?」

「それは偽装。あのときは魔術部門の先輩のフリしてた」

「私も同様です。藍沢先生の部下として……藍沢先生が懇意にしている方の名前を使わせて戴きました」

 俺が真似した先輩は、全然大人しくはないんだけど俺以上に五感が発達しているからヘッドホンを着けて、常に大きめのフードを被っている部分から誤魔化しやすいと満場一致で決められた。東雲の方は姿こそ知らないけれど相手を知っている藍沢先生と宇月が揃って素顔のままでバレないと豪語するくらいには似ているらしい。……そんなにか。

「たーて!たーてーと?」

「とあ。……気になるの?」

「てん!」

 とあの主張を受けた東雲はとあを地面に降ろし、スミレは相変わらずイデアを落として寝る体勢に入る。イデアが謎の伸縮をしている様に興味を引かれたのか、冬音と呼ばれていた子供が近付こうとして次男らしい春音に止められていた。

「ええと……お兄さん達も、顔合わせ……に、来たんだ、ですよね?」

「ん、敬語は要らない。一応そのつもり」

「たちてたちてー!」

「……この生き物……?は、安全なの?」

「多分安全。多分」

「(コクコク)」

流石に確信を持つにはちょっと挙動に謎が多すぎる。人は食べないと言いたいところだが、自分より大きな質量でも収納するだけの気概があるようだし。

「ていうかこれ、生き物……?」

「?」

「多分生き物」

 春音の引き気味な疑問は正しい。俺だって未だにイデアが何という生き物なのかという問いには答えられる自信がない。なんだこの光を返さない黒い物体は。形状すら定まってないのは生物に対する冒涜だろ。

「……お兄さん、魔術部門のフリしてたとき、護衛って扱いだったけど……強いの?」

「強い……かは定かじゃないけど。一応、アランさ……俺の上司の剣として扱われては、いるはず」

「強いです。とても」

「とてと!」

 夏音の問いに曖昧な返答をすれば、すかさず東雲から補足が飛んでくる。……そういえば東雲はアランさんの実力を冷静に見たことがないのか。アレを知っていたら流石に俺を強いと断言するのは躊躇うだろ……素手で怪異と渡り合う姿は控えめにいっても正気じゃなかったぞ。

「…………じゃあ、ぼくと戦って」

「夏音……?」

「兄さん?」

「?」

三人の反応は疑問を含んでいて、東雲の表情はどちらかというと困惑、とあの視線はまだ理解追い付かず、といった風だった。瞼を上げたスミレだけが静かに俺の反応を見ている。全員が夏音に視線を向けている中で、スミレだけが。



()()を、殺してほしい」

 ああ、どこかで聞いた言葉だ。

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