第二話 面影を見る、重ねずに見る・前編
「かェ!」
「華蓮さん……!」
「華蓮さんだ……!」
「華蓮さん!?」
反応は様々だったが、概ね驚愕が大きかった。この四人が保護されたときは外羽自身も合流できるとは思っておらず、する気もなかっただろうから当然の反応ではあるが。
結局シンさんに押し切られ、私と入江、大雅、外羽、そしてレンとうぱーにシンさんの七人で顔合わせをすることになった。レンとうぱーが一緒なのは子供には子供同士の方が警戒しないだろうというシンさんの発言である。
「あれ!?冬音喋れるようになってる!?」
「しゃベぅう」
「凄い喋れてる!良かった……!」
外羽が安心したように声を出し、当初を知らない入江と大雅は口を出さない。重戦闘区域で当初を知っているのは恐らく雪代さん達くらいなんじゃないだろうか。
「立ち話もアレだし座ろ座ろ?ほらうぱーくんがばたばたしてる」
「いやこれは多分走り回りたいだけです」
「ぴぴぴぴぴ」
叫ばないだけの理性はあったが、大人しくすることは耐えられなかったらしい。地面に解き放てば勢い余って走り回りだした。……本人が楽しそうなので良しとしよう。
「紹介するね、あの子はうぱーくん。リアムの遣霊で元気な子だよ」
「ぴょー!」
「遣霊……」
「あっ勘違いしないでほしいんだけど遣霊のみんながあんなにアグレッシブな訳じゃないからね?なんなら他の子は大体大人しいから」
「大人しいのみうくらいでは」
「それもそうかもしんない!」
スミレも割と大人しい方だとは思うが、残念ながらすももやなつを大人しいとは言えない。入江の肩に乗っているレンはんなんなと抗議なのか同意なのか判断に困る声を上げている。
「うぴぴ、ぴ?」
「……?ええと」
「うっぴ!うぴゃ?」
元気よく長男……夏音に寄って行ったうぱーに気圧されて、あれだけ警戒していた春音も反応に困っている。うぱーはある意味当然のように自分が警戒対象になるとは考えてない生き物なので、危害を加えられるかもしれないという思考もない。
「うぱーさん、何て言っているんですか?」
「……まぁ、多分名前を聞いてるんだろうとは思う。本人名乗っているようだし」
「あれ名乗ってるんですか」
「なん……」
「うぴ?」
俺達の会話から意図を察したのか、夏音がおずおずとうぱーの方に向き直る。うぱーは純粋に視線を向けられたことで笑顔を振りまいているが。
「夏音……です。よろしく?」
「ぴ!」
「トぉ、ン」
「ぴょーお!」
「……春音」
「あ、秋音です……」
「うぴ……ぴゅう!ぴゃーぅ、ぴゅう!」
「おやうぱーくん大興奮」
目を輝かせて何やら大騒ぎしているうぱー。こんなに興奮するのは甘いものを食べているときかみうと遊んでいるときくらいのものである。……事前に懸念されていた一つの可能性が確実化した、と考えていいだろう。三男が長男の肩越しにうぱーを見ているのはあの騒がしさに興味があるからか。
「なんなん、なんなな!」
「レンも気になるの?」
「だん!」
「え、こっちはちっちゃ……」
「なぁん!」
「レンだよ。俺の遣霊なんだ」
「だんなな!」
レンは流石というかなんというか。入江から紹介してもらってからにっこりと笑いかける。うぱーに比べれば控えめな主張に興味を持ったのか、次男の方がおずおずと見上げていた。
「なんな」
「うん。ええと……春音くん、レンのこと持ってみる?」
「……うん」
「はい、手を出して」
小さな手によじ登るレン。遣霊達の肩や手の中に乗ることも多いからか、慣れがあった。出来るだけ驚かせないようにという配慮なのか、普段のようにやたらと動いたりはしない。末っ子である冬音が伸ばした指をぺちぺちと両手で叩いて遊んでいる。
「やっぱり同じくらいの年の子の方が親しみやすいのかなぁ」
「子供同士は仲良くなるのが早いと言いますし……」
「実年齢は考慮しないということですか」
「ほら、外見年齢に精神年齢って引っ張られるよね!」
うぱーは下手すると入江達より年上の筈なんだが、……まぁ確かに、うぱーを子供じゃないというのは無理がある。
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