第三十三話 未だ、縁は切れず
「そっか。……良かったぁ……!」
へにゃりとした笑みを浮かべて嬉しそうに微笑む姿を見る限り、心の底から入江君のことを心配していたことが伝わってくる。それと同時に今回の騒動に関しては一切関与してないんだろうなぁってところも。
「今回、情報筋にはちょーっと情報が流されたっぽいんだよね、ノエルくんも確認してくれる?」
「勿論です!漸く華蓮と再会出来たんだもの、何が何でも守りますよ!」
強火だねノエル君。同情にしては少し献身的すぎるような気がしないでもないけれど、贖罪にしては縁が薄いじゃん。
「それにしても……その華蓮が入っていた結晶、研究部門に渡すことで穏便に移籍できるっていうのなら、多分かなり希少だと見て良いですよね?もしかしたら特性由来なのかもしれませんけど……」
「そうだね、縮小するって言われてたものだし、特性由来と見ていいんじゃないかなぁ。その場合特性由来の結晶が何で交渉材料になるのか、っていう疑問はあるけど」
いくら研究部門のことが気に入らなくても、実力はそれなりに認めてる。異常なくらい特性とかについて調査してるのは見てたからね、実物を初めて見た、入手した程度じゃ止まらないという不本意な確信もあっちゃうわけよ。
「あーあ、結局今回の怪異乱入については特に進展なしかぁ」
「え?あ……いえ、ちゃんと調べましたよ?」
「え?」
「怪異避け。主に一般区域で使われてる……怪異の興味関心というか、意識を特定方向に向けさせる機器です」
「え?うん、それは知ってるけど……」
「これの仕組みって、怪異を向けたくないポイントから向けていいポイントへ誘導する機器なんですよね。いくつかの……少なくとも魔術部門の例の地下と、研究部門の秘匿されていたエリアから、重戦闘区域へ向かうように対の機器が設置されてました」
ノエル君の説明はまさに青天の霹靂……少なくともそんな職員じゃなくても手に入るアイテムが原因だったなんて思いもよらなくてびっくりしちゃった。いやでも確かに……それなら真っ直ぐ重戦闘区域にやってきた意味も分かるな、あと変異種ばっかやってきた理由も。
「あの機械、ある程度ジャンルも絞れるんだよね」
「あぁ、だから……」
「うん。変異種ばっかりだったのはそういうことだと思う。精神干渉系が厄介なのは周知の事実だしね」
原因が判明しても犯人が分からないのはもうしょうがないかなぁ。重戦闘区域に機器設置出来る相手は少ないけど、設置するほど恨んでたりする相手は割といそうだものね。
「一度事務所に戻って……ある程度情報を確認してルコンさんに報告するのはアリかもしれませんね」
「え、帰るの?」
「はい。流石に長居しすぎると怪しまれちゃうので……」
俺の口から惜しむような言葉が出て、二人揃って驚いたような困惑するような表情をしてしまう。……俺、この子のこと柄にもなく気に入ったのかな、気に入るようなことしてたかなこの子……俺にも分からない感情が少しだけ見えて、柄にもなく動揺しちゃった。
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