第二十七話 指先すら、届かなくて
気が付いたときには全て片付いていた。告げられたのは華蓮が研究部門にいたことと、本人が保護されることを拒否したこと。自分だってまともな環境にいないのに誰かのために身を砕く。その優しさが暖かくて苦しいよ、俺は何も力になれないから余計に。
「そう……ですか」
「なん……」
小さな体がぎゅうと温もりを渡してくる。心配はかけたくないのにな、もしょもしょと慰めるように体を滑り込ませては出来るだけ身体を密着させる。気遣いに応えるようにそっと頭を撫でた。
「本人は今は無理って言ったけど……俺達としては出来るだけ早く保護したいんだよね。何が怖いってあの偽装能力俺すら欺いてる以上対処法がない」
「そんなに……?」
「うん。正直問答無用で連れて帰りたかった」
青藍さんがそう思っていても連れて帰れなかった理由。研究部門で作られた子達だという四人の子供達。……華蓮が逃がしてほしいと頼んだということは恐らくまだいるのだ、近い境遇の子供たちが、逃がすに逃がせない子供たちが。
「それで……その、連れて帰ってきた子供達は……?」
「今は藍沢先生に診てもらってる。というか存在が存在なだけに、俺とかアランとかは現状面会謝絶状態なんだよね」
「存在が?」
「うん。詳細はまぁ……どうせバレるし良いか。作られたって言われるだけあってあの四人、クローンみたいな存在なんだよ。で、俺とアランはベースにされてるから、今は面会謝絶」
「っそれ、は……」
なんてことないように言われたが、事実ならばかなり由々しき事態である。本人達の知らないところで自分達のクローンが作られ、あまつさえ利用されていたのだとしたら……成程、華蓮が何が何でも逃がそうとする理由も分かるような気がした。
「そういえば……四人と言っていましたよね、では、あと二人も?」
「まぁうん。一人はちょっと詳細確認しないといけないけど……もう一人は今ここにいないから、取り敢えず保留」
今はいない。……それ以上の説明を拒んだような気配があった。いつだって重戦闘区域に所属していた歴代の職員の話は誰も彼もが口を閉ざす傾向にあって、いない訳じゃないことは分かっているのに書類にも記載されていない。恐らく歴代の職員なんだろうとは察しがついたが、それ以上詮索はしなかった。
「ええと、それで今後なんだけど」
「はい」
「一先ず研究部門からの偵察回避目的も兼ねて、当分の間は通常任務だけ。あいた時間は鍛錬と書類整理になるかな。今回の件で無茶した奴は基本書類整理の方ね。リアムが決めた」
「リアムさん……」
「対象はアランとお前とノエルだから」
「俺もなんですか!?」
「当たり前でしょ。管理人とやり合ってんだから」
そういわれるとぐうの音も出ないが。……いやでもなんだか最近療養ばっかりで全然鍛錬出来ていないような気がする……腕がなまりそうだし少しくらい自主練したい。……ずっと眠っているだけだと、どうしても余計なことを考えてしまうし。
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