第二十一話 ずっと、貴方を探していた・後編
死角から死角へ、出来るだけ捕捉はされないように。その筈なのに何故か攻撃が通らない。寸前で弾かれるナイフ、紙一重で避けられる斬撃は全て死角からの奇襲の筈だ。
「お前の特性、絶対相性が悪いんだぞ……!」
「生憎様、俺の特性に相性有利はないんでね」
口角を上げたその表情には無理があった。多分誰かと話す……もっというとこういった軽口に慣れてない。普段は淡々と任務をこなしているのか、それともここに襲撃に来る相手が少ないのか。前者の可能性よりも後者の可能性の方が圧倒的に高いが……。
「(戦い慣れしすぎてる。これを演習だけで極めたんだとしたら、戦闘スキルが飛び抜けているな)」
少なくとも実戦経験がなくてこれだけ死角からの攻撃を弾けるのだとしたら誇っていい。特性ありきの技能だとしても真正面から戦うしか出来ない相手に負ける要素がなさすぎる。特性に相性不利がないという言葉が、あながち妄言だと言い切れないレベルなので。
正面から打ち合えるほどの技量は残念なことに俺の方にない。一応弱くはないと自負しているけど、わざわざ相手が有利になる状態で戦う必要性はないだろうと判断して更に作戦を組み立てる。目的はあくまでも華蓮の保護と、証拠集め。ここで下手に勝ってしまうと技量から逆算されて重戦闘区域に何らかの探りを入れられてしまうかもしれない。それは少し困る。
「(出来るだけ……敗走したとみせかけて、でも任務は遂行……!)」
少し難易度は高いけどこなせない訳じゃない絶妙な任務だ。手を抜かれたと思われないように攻撃は続けながら証拠を探す。魔術部門で入手した書類には華蓮との関連性を裏付けるような表記がなかった。しらばっくれられても困るし、ここから連れ出すことを拉致だなんていわれたらもっと困る。……いやでも逆に一切華蓮がいた形跡がないのなら拉致と訴えることこそが言いがかりなのでは?
「こんなところにわざわざ潜り込んで来るってことは、楽園教の回し者?」
「悪いけど、依頼主の情報は渡せない」
思わず一緒にしないでほしいと叫びそうになったのを堪えて曖昧な返答に留める。俺を探るために楽園教の方に目を向けてくれるんならそれでいい、酒見事務所と楽園教が繋がってると思われるのは流石に困るけど。
「大体!こっちはこんな手練れがいるなんて聞いてない!」
自棄になったような勢いで接近からの鍔迫り合い。そこから更に重ねて特性起動。弾かれるまでの一瞬に仕込みは済んだ。追撃は敢えて逆らわず大きく吹き飛ぶ。そうしてから、全力で特性を使い姿を消した。
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