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秩序の天秤  作者: 霧科かしわ
第四章 あの日、伸ばせなかった手を
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第十九話 ずっと、貴方を探していた・前編

 アランさんが研究部門へ足を踏み入れたら俺の任務はスタートだ。ひょいひょいと人の死角から死角へと渡り歩くことで存在を秘匿する。俺が酒見事務所の外回りを担当する一番の理由はこの特性(アビリティ)。勿論完全に警戒とかされてたりする場所とか人が多いと死角を渡り歩くのも一苦労、だから今回は三か所、同時に訪問することで意識を分散させる。

「(もしかしたら罠の可能性もあるけど……)」

 示し合わせたような訪問を迷いなく受けた辺り、余程詮索されてもバレない自信があると見ていいだろう。下手をすると返り討ちにするだけの秘策がある可能性だってある。流石に俺の存在、ひいては特性を知られているとは思えないからそこまで心配しなくてもいいかもしれないけれど。……だからといって油断してはいけない。

 警戒だけはしたまま、どんどん奥へ。先に青藍さんから図面は貰っていた、怪しいのは最奥……ではなく、不自然に人の出入りが少ない場所、いくつかある研究室の中でも一番使用実績が少ない……もとい、存在しない部屋の更に先。

「暗いんだぞ……」

足元すら見えないくらいの闇。ちょっと心配になるくらいの暗闇に自信がなくなってきた。……いやいや、もしかしたらちゃんと電灯があるのかもしれないけど、潜入捜査の身でそんな目立てないから大丈夫、大丈夫……。

「(でもやっぱ暗すぎるんだぞ!)」

 これでも夜目は効く方なのだ、ここまで見えないのは明らかに不自然である。敢えてここまで暗くするのだとしたら……人間の本能的な恐怖を刺激して自ら足が遠のくようにしている?どうしてそんな回りくどい方法を……?

 疑問を抱えたままどんどん先へ進み、少し開けた場所に出る。ここまで来て漸く少し暗い程度の明るさになって少しだけ息を吐いた。理性では理解していても、やっぱり先の見えない暗闇は怖い。

 周囲には何に使うのか分からない器具や、少し乱雑に纏められた書類、触ったら怒られそうな色の薬品……あんまり近付かないようにしておこう、今回の目的には関係なさそうだし。

「華蓮くーん……いますかー……?」

抑えた声で、でもちゃんと響くように。反応を探るように耳を澄ませると、少し離れたところから身動ぎする気配があった。足音は消して、でも特性は使わずに気配のした方向へと向かう。

「……?」

「あ、いた」

「!」

 警戒して身体を強張らせてしまう前に両手を上げて危害を加える気はないことをアピールする。……通じてるかな、流石に不審者度合いが高すぎるかもしれない……俺だって同じ立場なら間違いなく警戒を解かない。とはいえ、ここで綾華の名前を出すのはあまりにもリスクが高すぎる。

「ええと……一応、怪しいものじゃないんだぞ。俺、酒見事務所から来たノエルって言うんだ」

「……どこに怪しくない要素が……?」

それは本当にそう。自分で言ってて怪しさしかないなって思ったもん……それでも事務所の中では一番怪しくないんです!見た目的に!

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