神様への悪態
「またブスって言われたよ…」と、テンション低めに図書館の扉を開いた。
慣れているのでいちいち気に病んだりはしないが、若干落ち込んだりはする。
そんな気持ちを吹き飛ばしてくれるかのように、女神のような笑顔を携えた友人が、私を見つけ小走りで向かってきた。
「遅かったね?どうしたの?」
図書館という場所柄、小声で心配してくれる彼女は、私の大切な友人であり、この学校一の美少女である。
守ってあげたくなる華奢な体躯に、余白のない小さいお顔、くりくりのお目めには、ぱっちりまつ毛。
染めていないのに元から少し明るい茶色の髪の毛は、天パなの〜と言っていたが、絶妙におしゃれな感じにウェーブがかかっている。
瞳の色まで色素が薄いときたもんだ。
逆に何でまつ毛だけ黒くて長いんだよ、神様。
「席とっておいたよ!テスト勉強しよ!」
神様に悪態をついたが、彼女は女神だ。
なぜならスクールカーストの頂点にいるはずなのに、読書が趣味という共通点がある事で、私と仲良くしてくれているのだ。
私があの顔だったら、絶対チアリーディングとかテニスとか華やかな部活に入って、無双するのにと考えてしまう。
「はぁ〜今度のテスト数学が、めっちゃ難しいらしいよ〜範囲も広いし困ったね〜」
と、これまた可愛らしい声で彼女が言うのに賛同しつつ、勉強道具を開いた途端、
ドーーーーンッッッ!!!
バリバリバリバリーーーーーーッッッ!!!!
きゃあああああーーーーー!!!
逃げろーーーー!!!!
ものすごく大きな音が響き、悲鳴が聞こえた。
「あわわ、どうしたんだろ、とりあえず逃げなきゃ……!」
慌てる友人と共に、急いで図書館の扉を開け昇降口に向かい走り出す。
もうすぐ外に出られると、階段を降りたそこには、昇降口のガラス扉にアクセル全開で突っ込んで大破している軽自動車と刃物を持った危ない感じの、なんかアレなやつ。
あーこれダメなヤツだー…と思った瞬間、「きゃーーーーーっ!」っと叫んでしまった友人。
可愛い女の子がいたらこっちに向かってきちゃうよね、そうよね。アレなヤツが向かって来たよ。
でも、こんな美少女が死ぬなんて勿体無いと思わない?私みたいに生きててもいい事ないブスが死ぬ方がよくない?
なんて事を思ったのが後か先か、友人を突き飛ばし、腹部に広がる熱さ。
さようなら、短い人生。
私は暗闇の中に落ちていった。