プロローグ
あぁ。またか。
慣れっことはいえ傷つかない訳ではない。
「あー、あの子。隣のクラスのブス!」
「この令和の時代にあの顔は可愛そう笑」
「整形するしかないんじゃね?」
「いや、あの骨格じゃあ整形してもブス確定」
休み時間の喧騒を避けるため、図書館へ向かうべく1人で廊下を歩いていると、いつものように、私に対する悪口が聞こえてくる。
しかし、悪口を言っている彼らも私も高校生である。大人ではないが、したところで特にメリットもないイジメや諍いをするほど子供でもない。
彼らからすると、休み時間の暇つぶしに廊下で日常会話をしているにすぎず、面と向かって言ってくるわけではない。
だからこそ言い返す事もできず、受け止めるしかないのは切ない。(聞こえてるんだよばーか!もっと小さい声で話せよ)
しかし、言い返すにも問題がある。
自分で言うのも悲しいのだが、私は紛う事なきブスだ。
ブスにもいろいろな種類というか系統があるが、私の場合は我こそは日本人!ザ!平安顔!なのだ。
下膨れた顔の輪郭。そこに乗っているのが、空を目指すのをやめたのっぺりとした鼻におちょぼ口。
伝統芸能の面かと自分でもツッコミたくなる。
切長といえば聞こえがいいが、開きの悪い細い目。
しかも、瞳自体が小さいので努力して目を見開いても白目部分が増えるのみ。
たぶん二重整形や眼瞼下垂手術をしても無駄なのである。
あぁ、三白眼はシャープな輪郭のクール美女にしか、プラスに働かないのである。
実は決して太っているわけではない。
やや小太りよりの標準体型に、でかい顔がバランス悪くついているのである。
太っているわけではないと言ったが、だからといって体型も優れているわけではない。
ダイエットに勤しんだことは何度もある。
貧相な胸、脂肪がつきやすい二の腕、筋肉質かつ安産体型な下半身。
痩せても胸を含む胴体が痩せるだけで、制服から出ている部分は一向に落ちる気配がない。
ストイックに取り組んだとて、誰に見せるわけでもない胸が、これ以上減るのはマズイのではないかと断念するのである。
廊下の窓に映る自分を見て、はぁとため息が漏れた。