1話
僕は救世主。この世界に転移してきて強大な敵を倒し続け、ついには魔神を倒した。
体も心もボロボロになりながらも凱旋した。
民衆も国王も僕を称賛した。
僕は悦に浸りながら、この世界からの解放も喜んだ。
早く、元の世界へ戻りたい。身体が光に纏われ、気分も高揚してきた。
その時だった。
光が急に消え、身体が寒くなってきた。
目線を下ろすと胸から剣が生えている。血が滲み、力が抜けていく。
『君は強くなりすぎた。これ以上君が強くなっては誰も止められないのだよ。わかってくれ』
国王たちの賞賛が嘲笑と化していた。
「全員…ぶっころ…」意識と首が飛んだ。
―
『我を倒して得られたものはなんだ?地位か?名誉か?金か?女か?』
「何も得られなかった…ただ憎悪だけが募っていく…」
『お前は奴らをどうしたい?』
「奴らを蹂躙したい!」
『魂が悪に染まった時の高揚感は忘れられない。お前に力を貸してやろう』
「何が目的だ…?」
『お前が新しい魔族の王となれ。我を喰らい、新たな世界の王となれ』
「面白い!あいつらに復讐できるのであれば!一度倒した相手でも手を組んでやる!」
魔神の魂を喰らう。
溢れる力に酔いしれる。膨れ上がった力はいつしか身体を爆ぜさせる。
―
?「ふぅ…これが新しい体か…」
身体を動かす。前世の力と魔神の力も相俟って、心地が良い。
今なら全てを壊せそうだ。
?「ステータスオープン」
N:サトリ J:新たなる神 S:神呪力
サトリ「名前はそのままか…職は魔神でも無いのか…まぁ救世主と魔神を組み合わせたら違うものになるのか…」
ふんふんと頷きながら考える。
今は殺されてからどれくらい経ったのだろうか?
破滅させた魔神の領土はどうなっているのだろうか?
考えることはたくさんあった。
最後に一つ思うこと。
サトリ「新たな救世主は誰が来るんだろうなぁ」何故か笑みが溢れた。