表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/16

3'

3'



 枕の質を下げた効果は覿面に顕れているようだった。災転じて福を成すと言うか、不眠の性質を斯様な使い方で活力に代えると言うのは割合最近まで思い付きもしなかった。精彩を喪って久しい人生において数少ない娯楽と言えた睡眠を削る発想が抑無かったのだろうと思う。


 毎朝の倦怠感も慣れたものだ。時折脳髄を引き出して冷水にくぐらせたくなる程度。安眠の不足が命を縮めるとしても、望む所であるから何を思うでもない。


 消極的自死とは言え心身を痛め付けるのに怠りが有ってはならない。叶うなら多方面に不摂生不養生を徹底すべきところ。だと言うに、何故かダイエットなど始めてしまう自己矛盾には我ながら首を傾げざるを得ない。


 贅肉にまみれた肢体で棺に押し込まれる無様さを思うと彼に顔向けができない、そう思うが故だった。しかし、選ぶ因も否応の無かった彼に対して真に誠実な死に様の正否は考える程ど壺に嵌まる気分だ。綺麗に死化粧を整えて周囲に送り出して貰った俺を彼に差し上げるべきか。生き苦しんで今生の罪業を濯ぎ禊いで赦しを請うか。正直手探って迷走

するのは如何にも馬鹿らしいが、苦しみのた打つネタは多いに越した事も無い。自己嫌悪に至るネタもまた然り。"心"身共に自虐を極めてようやっとどっこいな半生だったのだ。


四の五のと言って体裁も後の悲哀もかなぐって幕を引かない理由にも既に心当たりは有った。要するに今世は居心地が良いのだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ