大英雄ニキーティチ
この世界における第一次世界大戦の結末
バルカン連邦構成国、ガルヴィアの首都ガナエヴォにおけるグラントリア皇太子暗殺事件に端を発するグラントリアとドルツとの戦争は、やがて領土問題、文化・民族的対立を孕んでいた周辺諸国を雪だるま式に巻き込んでの全面戦争へと発展。1914年から1921年までの7年間にも及ぶ【第一次世界大戦】が勃発した。
ノヴォシアによる第二次イライナ侵攻、及びスオミ侵攻(冬戦争)に端を発する東部戦線は、ノヴォシアの弱体化とドルツの電撃的な侵攻により極めて短期間のうちに終結。最終的にレニングラード州を失陥、『ノイラント』というドルツの飛び地を作るに至ったノヴォシアは第一次世界大戦初の脱落国となり、ドルツに対する憎悪を煮え滾らせながら戦争から去る事となった。
1918年、アメリアの参戦が確実視されるなりドルツはその前に現状の敵の一掃を企図。1918年春、かのズメイを討伐したイライナの英雄ミカエルにあやかり【ミカエル作戦】と名付けられた春季攻勢を実行に移すなり、グラントリア、イーランド、フランシスの3ヵ国を相次いで撃破。イーランドは大陸から放逐されフランシスは領土の半分以上を割譲、グラントリアは領土の失陥こそなかったものの主力部隊の喪失という痛手を被り屈辱的な脱落を喫した。
1918年夏、ついにアメリアがドルツに対し宣戦布告。大陸の覇者と新大陸の征服者による全面戦争は3年にも及び、1921年、両者はついに戦争継続を断念。互いに講和を結び、惑星規模の世界大戦は『勝者のいない戦争』として終結した。
しかしこの戦争で全ての問題が解決したわけではなく―――むしろ、新たな火種を世界中にばらまく事となった。
その火種は1939年9月、一斉に芽吹く事となる。
【第二次世界大戦】の始まりである。
オレンジ色に染まった夕焼けの空と、一面に広がる麦畑。
赤みを帯びた黄金にも見える大地は波打って、さながら海原のようにも見える。
どこまでも広がる麦畑の向こう、佇む人影が2つある。
はるか遠くで豆粒のように小さいけれど、どういうわけかそれが誰なのかすぐに見当がついた。
カタリナお祖母ちゃんと、母さんのようだった。
きっとここはあの世で、どうせ俺に「帰りなさい」とでも言ってるのかな……そう思いながら歩みを進めてみるけれど、やはりというかなんというか、どれだけ歩いても祖母と母のいる場所に近付けない。
戻ってきてくれよ、もう一度子供たちの頭を撫でてやってくれよ―――そう思いながら手を伸ばしたその時、気付いた。
カタリナお祖母ちゃんが、母さんに何かを告げているのだ。
泣いているようにも見えた。身振り手振りで何かを告げている。
『なぜお前までここに来た』『帰りなさい』『孫たちのところに帰りなさい』―――まるでそう告げているようにも見えた。
《―――乗車中のお客様にご連絡いたします。現在当列車はノヴォシア領ウルファを通過中です》
シズルの声が告げる車内放送で目が覚めた。
涙でぐっしょりと濡れた目元をハンカチで拭い頭を上げると、すぐ頭上にクラリスの顔がある。
すう、すう、と寝息を立てる彼女の顔は昔から何も変わっていない。そして相変わらず、隣に座席があるから俺はそっちに座ると言ったのに、自分の膝の上に俺を座らせたがる癖も昔から変わっていない。
窓側にある隣の席では、同じくカトレアが膝の上にラフィーをちょこんと乗せて微笑みながら頭を撫でているところだった。ラフィーはというと頭を撫でられたりケモミミをモフモフされて気持ち良かったのか寝落ちしてしまったようで、口元から涎を垂らしつつ頭をカトレアの大きな胸に埋めて、すやすやと眠ってしまっている。
「あら、お目覚めですか旦那様」
「ん……」
頷いてから窓の外を見た。
見覚えのある場所だ。
ウルファ―――ノヴォシアの工業都市だ。郊外に出れば広大な土地が広がっていて、この辺ではハチミツが名産となっている。帝政時代は帝室御用達の高級ハチミツがここで生産されていて、その値段は労働者階級では決して口に出来ないほどだった。貴族でも小瓶を1つ買うのに少しばかり覚悟が必要になるレベルである。
まあ、覚悟といってもサバゲーマーが長物を新たにコレクションに加える程度の感覚ではあったのだが。
俺も昔社会人だったから分かる。ボーナスが出るとついつい4万とか6万とかする長物をコレクションに加えたくなるものだ。
「……泣いていらっしゃったのですか」
「……夢に母と祖母が出てきた」
「……そう、でしたか」
拙い事を聞いた、という表情を浮かべるカトレアに「いや、気にしなくていいよ」と笑みを浮かべながら言ったところで、パヴェルが手押しワゴンを押しながら3号車側からやってきた。
「ほーらお前ら、飯だぞ」
そう言いながら乗車中の子供たちへ、ワゴンに乗せた弁当箱を渡していく。
さすがにこのALFA-Xは試験車両であり、居住性は二の次にしている。だからチェルノボーグ号のような食堂車は連結されておらず、食事は持ち込んだパンとか干し肉とか缶詰、あるいはこういう弁当になるだろうなとは予想していた。
それでもパヴェルなりに知恵を尽くしたのだろう。金属製の弁当箱は触っていると熱いくらいに加熱されていて、木製の取っ手を掴んで蓋を開けてみると中にはほかほかのご飯とカレールー、そして大きなソーセージが3本。右側にあるスペースにはでっかい唐揚げが5つも入っている。
「相変わらず美味そうだな」
「まあな。ホントは作り置きじゃなくて、ちゃんと出来たてのやつを食わせてやりたかったんだが……」
「いやいや。こうして用意してくれるだけでもうれしいよ。ありがとうパヴェル」
「よせやい照れるじゃねえか」
わしわしと頭を撫でると、パヴェルはそのままワゴンをデッキの辺りにある金具で固定して、運転席の方へと向かっていった。食事を終えたらシズルと運転手を交代するつもりなのだろう。
「うっっっっっっっっっま!!!!!!!」
推定120㏈。すぐ後ろから轟いたアズの声に、隣ですやすや眠っていたラフィーも思わず飛び起きて、俺と2人で親子そろってケモミミぴーん、尻尾ぴーん、毛を逆立たせた状態で目をビー玉みたく丸くして固まってしまう。
ぎぎぎ、と軋む音がしそうな感じでゆっくりと互いに顔を見合わせ、そっと座席のヘッドレストのところから顔を覗かせる。
後ろではアズが(とてもアイドルとは思えない勢いで)パヴェル特性のカレーをがっついてるところだった。
やっぱり親子なのだろう―――前世がティ○レックスか何かなんじゃないかってレベルの声帯まで継承しないでもろて。
でもアイドルやれるだけの歌唱力支えてるのもあの声帯なんだよなぁ……。
「うふふ、アズってば。そんなにがっついたら喉に詰まりますよ」
「だって美味しいんだもんこのカレー!」
※一応あの娘アイドルです。
テレビとかメディア越しに見るアズはというと、清楚で誰にでも愛嬌を振りまく国民的アイドルとして名が通っている。ファンの顔と名前を1人1人キッチリ覚えるほどの記憶力と無茶振りにも笑顔で応えるファンサが人気の秘訣で、握手会が始まれば長蛇の列ができるほどだ。
でもパパは知っている。素のアズは全然そんなじゃない、と。
母親譲りの豪快な性格なのだ。良くも悪くもそうである。アイドルとしてのアズと、アズラエルという1人の人間としてのアズ、2つの顔を持っているのだ。
まあいい、俺もカレー食べよう。
「クラリス」
「もふ?」
ふがふが、と人の髪に顔を埋めてすりすりしたり、ケモミミをスンスンハスハスクンカクンカしたり舐め回したりするクラリスに申し出る。
「俺が上に乗ってちゃご飯食べづらいでしょ。降りるから」
「ダメもふ」
「語尾」
「クラリスはご主人様のバニラ臭を1日36時間嗅いでないと即死する恐れがあるもふ」
「知ってるかい、1日って24時間なんだぜ」
仕方がないので自分の分は後回しにし、クラリスの上にちょこんと座ったまま彼女にカレーを食べさせることに。ホカホカのご飯とカレールーを乗せたスプーンをクラリスの口へと運んでいると、隣でラフィーを抱きしめながら吸っていたカトレアも羨ましかったらしく、ラフィーに「ご主人様、私もアレ……!」と要求し始める。
親子2人で妻と自分の専属メイドにカレーを食べさせる公爵と息子……なにこれ。
クラリスにでっかいソーセージを食べさせていると、ポケットの中のスマホが振動した。
取り出して見てみると、モニカからのメールが入っている。
子供たちは全員連れてきたが、妻たちは全員連れてきたわけではない。さすがに城をがら空きにするのは戦力的にマズイだろうという判断と、盟友ニキーティチを迎えに行くためだけに大勢で行く必要はない、という判断を受けての事だ。
だから同行した妻はクラリスのみとなっている。
こちらの無事を尋ねる内容のメールに、とりあえず車内の様子を一通り撮影してから画像ファイルを添付。『みんな平常運転』という一文を添えて返信しておく。
この平常運転が当たり前の毎日が、一刻も早く戻ってくる事を祈りたいものだ。
《間もなく終点イグルーツク、イグルーツクです。お降り口は左側です―――》
窓の外では雪が降っていた。
イグルーツクは寒冷な場所ではあるが、しかし例年であれば5月に入れば気温は氷点下を脱していて、緩やかにではあるものの雪解けが始まっていてもおかしくはない筈だ。
それがどうだろうか。窓の外では未だに雪が降り続けていて、バイカル湖の湖面には分厚い氷が張っている。狼に追い立てられた鹿が凍った湖の上を走って逃げていくのを見て、早くも寒冷化の影響が出ている事を確信するに至った。
一応、城にはリュハンシクの農民が3年は食い繋げる程度の食料が備蓄されている。一日の食事量を削り、厳格に計画すれば4年は持ちこたえられるだろうが……いずれにせよ、食料備蓄の解放は早い段階で行っておきたいものだ。少なくともイライナ国民は、飢えとは無縁の状態でこの暗黒時代を生き延びさせなければならない。
下手したらさっき食べたカレーも食べ納めかもな、と寂しい事を想いながら、3号車にある武器庫からベリルとグロックを持ってきた。
パック―――最近では”セルゲイ”という偽名を名乗っている彼の情報では、世捨て人同然の生活を送っているニキーティチにはノヴォシア共産党の監視が付いているらしい。
彼の事だからそういう監視はとっくに片付けているだろうが、万が一という事もある。
マガジンをチェストリグのポーチに押し込んで、コートを羽織りウシャンカをかぶった。ネックウォーマーも身に着けて、子供たちが防寒着をしっかり着込んだのを確認してから列車の外に出る。
折り畳み式のタラップ(駅のホームで降りるわけではないのだからこれが無いとスムーズに乗降ができない)に足をかけた途端に、全身の肌を突き刺すような苛酷極まりない寒さが牙を剥いた。
スマホを取り出し、画面をタップしてアプリを立ち上げ気温を確認する―――現在のイグルーツクの外気温、なんと破格の-30℃。昨年の冬季の平均気温ですら-25℃であるというのに、5月でこれだ。
うー寒っ、と震えるアザゼルに静かにするようジェスチャーをして注意し、ベリルの安全装置を外した。グリップ左側にあるセレクターレバーをフルオートに入れ、早くも警戒態勢を取る。
プーン、とアザゼルお手製のドローンが頭上に展開。4機1組となって編隊を組み、湖畔にある林の方へと飛んでいった。
《―――俺とシズルはここで列車を護りつつサポートする。頼んだぞ》
「分かった」
この作戦に―――イライナの、いや、世界中の運命が掛かっている。
200年前、ズメイとの戦いに従事しかの邪竜を封印へと追いやった伝説の大英雄の片割れ、ドブルィニャ・ニキーティチ。
彼ならばあの不死の竜の倒し方を知っている筈だ。
そうでなければ、最低でも二度目の封印を行うか。
そのいずれもが叶わなければ―――獣人は、かつての旧人類がそうであったように死に絶えるだろう。人類史が終焉を迎えるか否かの瀬戸際なのだ。
ツァスタバM21を構え、後ろをついてくるラフィーに目配せする。
警戒しながらもライフルを向けた方向は、すぐ傍らに広がる凍てついたバイカル湖。まるで自然の生んだスケートリンクの如く分厚い氷の張った湖面に、防寒用のテントを張り、湖面の氷の上に椅子を置いてでっかいカメラを構え写真を撮っている人影が見える。
ノヴォシアの監視の人員かと思い警戒したが、違うという事はすぐに分かった。
見覚えのある姿だったからだ。
銃を下ろせ、と子供たちにハンドサインを送り、最低限の警戒心を維持したまま歩みを進める。
「―――思ったよりも早かったな」
足音で俺たちの気配を察したのか―――あるいは、最初からこの時間に俺たちがここを訪れる事を察知していたのか。
要因が何であれ、情報を扱う事に関しては彼の右に出る者はいない。世界の舞台裏で暗躍し情報を集め、それを武器に世界を裏側から動かしているかのような……かつて転生者殺しとの戦いを共にした彼はそういう男だ。
パシャ、とシャッターを切り、バイカル湖の上空を飛ぶ鳥たちの姿をカメラに収めるパック。撮影した写真の出来を確認して満足そうに口元に笑みを浮かべるなり、やっとこっちを振り向いた。
以前に出会った時からあまり変わっていないような印象を受ける。かれこれ20年ぶりの再会だが、変に年老いているだとかそういう事は一切なく、まるで時間が止まったかのような印象すら覚える。
「久しいな、セルゲイ」
偽名を呼ぶと、彼は右手を差し出してきた。
20年ぶりの握手を交わすなり、パックはそっと湖畔の林の近くにある小屋を指差す。
「―――色々と準備はしておいた」
「……そりゃあ話が早い」
世捨て人同然の生活をしている、と聞いたものだから、説得に骨が折れるんじゃないかと心配だった。伝承によるとニキーティチは飄々としていて冗談を好む人物で、占い師でもあった彼の母からの言いつけ全てを破ってしまうほどやんちゃな若者であったと聞く。
しかし200年にも及ぶ孤独な生活が人間の精神に与える影響は計り知れない。そうでもなければ、旧人類滅亡後もこんなところで1人世捨て人同然の生活など送らないだろう。心は荒み、外部の人間を拒絶するような精神状態なのではないかと危惧していたのだが―――それはパックの尽力もあって杞憂に終わったようだ。
「基本だからな、相手の信用を勝ち取るというのは」
「……助かるよ、本当に」
彼に先導され、湖畔にある木造の小屋まで歩いた。
軒下には仕留めたと思われるでっかい鹿が吊るされている。腹が切り開かれ、内臓は取り除かれて血抜きされている最中のようだが、しかし金属製の桶の中に溜まっている赤黒い血はこの低気温の中ですっかり凍てついてしまっている。
生活感の感じられる小屋の周辺。林側にある裏庭の方から薪を割るような音が聴こえてきたので、おそらくはそこにいるのだろう。
「こっちだな」とパックに先導され、裏側へと足を運ぶ。
そこには斧を振りかざして薪を割る、一人の男性の姿があった。
ごく普通の男性、という感じは全くしない。体格はがっしりとしていて真っ白な頭髪の一本一本にも生気が行き渡っているように思え、活力に満ちた生命力の塊といった風貌だ。
その姿を直視するだけで重々しく、ずっしりと目の前に立ちはだかってくるような―――そんな存在感が間違いなく、その老人にはあった。
「ニキーティチ」
「ん、戻ったかセルゲイ」
額の汗を拭い顔を上げたニキーティチの蒼い瞳と俺の目が、合う。
その人たちは―――と彼が問う事は無かった。
イリヤー伝説の大英雄、ドブルィニャ・ニキーティチ。
彼は俺の姿を見るなり、手にしていた斧を滑り落としてから呟く。
「お前―――イリヤー、なのか?」
第二次世界大戦(1939年9月1日~1949年8月15日)
第一次世界大戦の屈辱的な敗北と、イライナによる斬首作戦により国家首脳を失い機能不全に陥っていたノヴォシアは、新たにトロツキーを書記長に据え再始動。終戦後、ドルツとの間に『ノヴォシア・ドルツ不可侵条約』を締結し西部への進撃経路を自ら閉ざすと、国内へと目を向けた。スターリンによる大粛清でガタガタになっていた国家基盤の整備とレニングラード失陥の屈辱を動力源とした大規模工業政策により目覚ましい発展を遂げたノヴォシアは、国民の飢餓を他所に軍備を拡張。水面下でレニングラード奪還のための牙を研ぎ始める。
1939年9月1日、機は熟したと見たノヴォシアはドルツとの不可侵条約を一方的に破棄し『国土回復作戦』を発令、ノイラント(※旧レニングラード州)へ侵攻する。第一次世界大戦での疲弊と世界恐慌の後遺症に喘いでいたドルツはこれを察知するものの迎え撃つ力はなく、ノイラントの東部4割を失陥し後退してしまう。
時を同じくしてノヴォシアは水面下でフランシスとイーランドに接触。両国ともドルツに追いやられた恨みを募らせていた事もあり、この攻勢に呼応する形でドルツに対し宣戦を布告。まるで第一次世界大戦が再び継続されるかのような形で【第二次世界大戦】へと発展していった。
欧州方面ではフランシス軍が攻勢を展開。ドルツによる占領地のレジスタンスと連携を取りつつ内外から激しい攻撃を仕掛け、12月にはついに旧首都パリツィアを解放。イーランド軍もローバー海峡を渡り大陸に上陸、フランシス軍の後方へと展開し進撃を始めた事でドルツは二正面作戦を強いられる事となる。
後はアナリアにも参戦を要求すれば対ドルツ包囲網が完成する……誰もがそう思ったが、しかし勝利の女神はそう簡単に微笑まなかった。
1941年11月、大東亜連邦との緊張が限界まで高まっていたアナリアの巡洋艦『アストリア』が東シナ海を警邏中だったジョンファ海軍の巡洋艦『長江』と接触した事に端を発する【東シナ海事件】が勃発。それに対する報復攻撃を口実に倭国海軍がルビーハーバーを空爆した事により、太平洋戦争が勃発したためである。
『欧米列強による植民地支配からの解放』を旗印に戦いを始めた大東亜連邦軍を押さえるべく、イーランドもフランシスも兵力を東南アジア方面に割かざるを得なくなり、結果として第一次世界大戦の傷が完全に癒えたわけでもなかった両国軍の進撃速度は停滞。その間に戦時増産体制に移行したドルツは北方諸国、アスマン・オルコ帝国、フェルデーニャ王国と連携し防衛線を構築。一気呵成に攻め込み短期決戦となると予想されていた欧州戦線は泥沼化の様相を呈し始める。
1945年、ノイラント失陥の危機に晒されたドルツはスオミ及びイライナに対ノヴォシア戦への参戦を打診。スオミは参戦するがイライナは中立国である事を理由に拒否(しかし水面下での資金提供や軍事教練、物資提供、非戦闘員・負傷兵の受け入れなどの支援を実施)。1946年、「マンネルヘイム攻勢」によりノイラントから押し出されたノヴォシアはイライナに対し『文化的ルーツを同じくする兄弟民族である』という理由と数々の融和政策を手土産にドルツへの参戦を打診するが当時のキリウ大公ノンナ2世はこれを拒否。ノヴォシアはイライナ公国領ヴィリウ方面を砲撃し『これはドルツによる侵略である』と喧伝するが、イライナはこれがノヴォシアの自作自演である事を見抜いており『これは我が国に対する侵略である』と声明を発表。ただちに【ミカエル・プラン】に基づいた斬首作戦が実施されノヴォシア上層部が全滅、混乱の中ノイラント奪還が絶望的となったノヴォシアは何も得る事がないまま第二次世界大戦から脱落していった。
一進一退の泥沼の戦争はイライナの仲介により終結する1949年8月まで続いた。




